アラブの春と中東アフリカ政策と日本

アラブの春(アフリカの民主化革命)の波から暫く経ちましたが、相変わらず世界はシリア情勢に釘付けです。そして最近私はシリア情勢をはじめ、アフリカと中東情勢が気になってしかたがありません。

現在石油の9割を中東に依存している日本は中東の安定に相当の関心を持っていなければならないはずです。実はアメリカの中東依存度はそれほど高くなく、さらにシェールガス革命によって今後さらに中東への関心を低下させる可能性があります。それに加え、オバマ大統領は2期目に入っても相変わらず内政重視の姿勢を崩していないように見えますし、世界の自国の軍事配置をアジア方面にシフトすることをほのめかす発言をしています。アメリカの中東政策はイスラエルだけということになってしまうような気がしています。

911事件からアフガニスタンとイラクの戦争、そしてオサマ・ビン・ラディンの死を経て、国際テロ組織のアルカイダは中東からアフリカのサヘル地帯(サハラ砂漠南端一帯)に拡散しています。

一方で、数年前、チュニジアのジャスミン革命で始まったアラブの春はリビアなどに拡散しましたが、リビアはNATOの介入でカダフィは失脚・死亡しました。古代ローマの元老院議員の大カトーは演説の最後に必ずカルタゴ(現チュニジア)は滅ぼされるべきであると付け加えたと言われ、歴史的には後年にスキピオ・アフリカヌスによって完全に滅亡させられますが、チュニジアもリビアも独裁者の失脚でパワーバランスが崩れています。

それらの残党(革命派の中で新政権から疎んじられたグループ)が前出のアルカイダ系と繋がり、混乱を強めているように見えます。つまり、911以降の世界の中東政策によって何が起きたかというと、女王蜂を捕まえたら軍隊蟻が散らばったような状態で、如何にも収拾の付かない混乱が広がる可能性すら予感させる状況です。

今年はじめの痛ましいアルジェリア事件は、こうした混乱の氷山の一角に見えます。唯一、フランス(とイギリス)だけがこれに対処しようとしているように見えます。

事実、昨日、シリア情勢について、EUはシリアの反体制への武器のエンバーゴを解禁しました。これからフランスやイギリスは反体制派への武器供与を積極的に強め、混乱収集に力を注ぐことになると思います。時を同じくして、アメリカの共和党大統領候補にもなったジョン・マケイン上院議員は昨日、シリアを電撃訪問しています。これは、アメリカ政府をシリア介入に傾けるための工作だと思いますが、実際のオバマ政権は不介入を続けるでしょう。

原発再稼動の目処が立たない状況と、アベノミクスによる円安が進行する中で、益々中東情勢が気になります。そしてその中東情勢を揺るがしかねないサヘル地帯の残党勢力によるアフリカ情勢の緊迫も気になります。来月、アフリカ開発会議が始まりますが、投資だけではなく治安の面でも支援できる体制を整えなければならないと思います。