年末を迎えて農政を考える

今年一年でずいぶんと多くの議論に参加させていただきましたが、あえて今年最後の記事としては農政を取り上げたいと思います。

というのも、他の分野と同様、大きな方針転換があった分野だからです。財政金融政策や外交安保政策などの方が大きく報道されてきたような気がしますし、私自身もそういう分野の書き込みばかりしてきましたが、実は農政も非常に重要な転換がありました。

私の視点での最大のポイントは需要サイドの農政に転換しつつあること。私が政治の世界に飛び込んで以来、たった1つだけのことをずっとお訴えし続けてきました。ブログでも何度か書きましたが、それは生産調整をやったり戸別所得補償とやらをやったりというのは、それ自体が全く誤りだとは言いませんし、社会政策としては正しいのかもしれないけど、産業政策としては間違いではないか、むしろ需要を喚起する方向にお金をつかった方が良いのでは、つまり供給サイドから需要サイドへの農政、ということをお訴えしていました。

端的に言えば日本が世界に誇るべき農産品を世界に輸出することであり、また6次産業化です。

そして何のことは無い、私ごときが考える事でしたのですでに皆様もお考えであったようで、国会で特段の運動をすることもなく、大方針として決まりました。

今から少し長くなりますが、全般の説明をしたいと思います。もしご関心があるようでしたら、先般発表されましたプランをリンクしますのでご参照ください。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/nousui/pdf/plan-honbun.pdf

1.現状認識

敢えて言うまでもなく、例えば20年前という私が社会人になった時代に比べると、農産品生産額は3/4に、就農者は1/2に、そして就農平均年齢は10歳上がって66歳になりました。改革まったなしです。

ただ悪い点ばかりではなく、世界需要でみれば、人口が例えば2050年までには今の1.3倍に、そして当然食料需要も増えるわけで、例えば過去の10年で中国の大豆輸入量は4.5倍に上がってきたそうです。

2.産業政策と地域政策

農政の視点として改めてこの二つの切り口が柱になりました。別の観点から言えば、この政策に直接かかわりがなければ止めていくということです。

例えば減反政策。地域政策と言えなくもないけど、生産調整、つまり供給量の調整による価格の調整は直接的に地域政策にはならない。ですから今後5年かけて廃止の大方針が打ち出されました。

個別所得補償も来年度から半額の7500円にし、5年後には廃止。これは、細かいことを言わなければ、頑張ろうが頑張るまいが、面積あたりに支給する方針なので社会保障のような政策になってしまう。農地を守る地域政策でもなければ産業政策にもならないのでこういう方針だと理解しています。

2ー1.産業政策

地域の潜在力に加え、先ほどの現状認識で触れたような世界重要の増加や、多様な主体の参加と、大きなトレンドである食料品価格の上昇をしっかりと睨んで、稼げる農業、強い農業の構築をする必要があります。必然的に、今までの供給サイドだけではなく、需要サイドの農政、そしてその需要と供給をつなぐバリューチェンの強化です。

1つめの供給サイドの構造改革としては、担い手への農地利用の集積のための農地中間管理機構(農地バンク:すでに立法化済)の立ち上げが決定されています。そして就農促進のための種々の政策を強化することになっています(青年就農給付制度など)。

2つめの需要サイドは世界市場を睨み輸出の倍増(1兆円)を目標とします。私の夢は地域の農協や組合が直接貿易実務とマネージメントを担える人材を雇い、それが直接アジア圏に出張に行って商談をまとめ、例えば組合員を集めて「来年の商談をまとめてきたから来年農家の皆さんがんばってね」と言える地域の制度を創設することですが、いずれにせよ輸出政策。直接輸出補助を行うとWTOなどに引っかかってくるのでできないとしても、ターゲットとなる国に合わせた何かの設備が必要なのであればそうした補助を創設することは考えなければなりません。

そもそも和食がUNESCOの無形文化遺産になったわけですし、和食は世界的にブームになりつつあるので、必ずしも価格競争力がないとあきらめることは慎むべきであると考えています。

3つめのバリューチェーンは主に6次産業化です。農政ファンドの創設や再生可能エネルギーなどの導入促進、生産流通の高度化や地域のブランド力強化などが盛り込まれています。私自身は、既存の農家に突然そういうことを担ってほしいと言っても無理だと思うので、まずはそうした人材を紹介したり育成したり、またそうした人材の雇用に助成制度を導入する必要があると思っています。

もちろん医療や福祉や学校などとの連携によって新たなニーズを開拓し、または対応していくことも絶対的に必要だと思っています。

2-2.地域政策

稼げる農政ばかりでは農業は継続できません。供給源をしっかりと守ることも絶対に必要です。農家という人間ではなく、農地やその地域をしっかり守るために必要な施策は継続・強化もしくは新設すべきは当然です。

まずやらなければならないのは、こうした根本的な問題について、国民の理解を得ること。安心安全な食料の供給源確保は社会コストであるということについて消費者理解を浸透させることが必要です。

その上で新設された制度としては多面的機能支払制度です。日本型直接支払制度ですが、これは従来からあった水路や農道整備などの資源向上のための支払制度の拡充に加え、法面整備などの農地維持についても支払制度を拡充したものです。

2-3.その他

産業政策と地域政策の柱にしたがって組み替えたわけですが、かといって大手を振って完璧な制度になっているかといえば、私はそうは思っていません。それは例えば飼料米対策のための補助制度の拡充。

これは理想と現実のギャップを埋めた制度であると理解しています。大胆な改革に伴うリスクヘッジの意味合い、食料自給率改善のための方策、飼料需要者負担軽減など、トータルとして考えた現実的オプションであると考えます。具体的に言えば反あたり8万の補助であったものを、反収に応じて増減させる。さらに多収品種への取り組みや藁利用などの取り組みに対しても補助が上乗せされるので実質米とコンパラの所得が得られる制度です。

こうした飼料米政策以外にも、割り切れない政策はありますが、十分に社会の中で十分に理解の得られる制度であると理解しています。

3.農政のこれから

まずは2-3で申し上げた政策の出口戦略を早急に検討すべきであると考えています。あと20年たったときに私は60才代。そのときに、安定した農業が産業としても地域の風景としても維持されるような制度を今築いておかないと手遅れになると感じています。

少し書きなぐった感じの雑駁な乱暴な議論をしましたが、以上が現時点での農政の方向と私が考えている視点です。