人口減少対策議員連盟

長い時間をかけてきた人口減少対策議員連盟での議論を取りまとめ政府への要望活動を行っています。現状認識と問題意識の部分だけを掲載しておきたいと思います。

演繹的視点

1. 人口減少問題に対峙するにあたり、我々は国家として何をなすべきかを議論してきたが、そもそも国家と個々の国民の関係に関する根源的議論が未だ不十分であるという認識に至っている。つまり、個々の国民は「社会持続のための資源」ではなく、当然、「自由及び幸福を追求する主体」であるが、人口減少の打開という「社会的課題」を誰がどのようにバランスをとるのかというコンセンサスを得られるに至っていない。

2. 即ち、国、地域、人の3つの主体の視点から、今一度、歴史的、社会的、文化・伝統的、経済的、統治体制的な切り口で、「人権と国の存続をどうバランスさせるか」の国民的コンセンサスを得る事が非常に重要である。現状では、それが無い故に、例えば「結婚が出来ない/子供が出来ない事がネガティブに捉えられるような議論は人権侵害だ」等と言った、人権の視点では当然であるが、少子化という課題の解決に向けた幅広い議論を委縮させる指摘によって、本質的な議論が進んでいないように見える。

3. 具体的に言えば、結婚・妊娠・出産・育児は国民個人の自由であり決して押し付けてはならないが、一方で、国民の希望を叶えられる環境を整えることは政治や行政の責任である。昨年、経済財政諮問会議に設置された選択する未来委員会は、人口1億人程度を目指すという道筋を発表し骨太方針の中で示したが、前述の根本的議論が欠けているため、その国民の出生に関する希望を数値化した希望出生率ですら国民への押しつけに繋がる可能性があると言う議論から、明確な目標として示すことができておらず、大いに議論の余地がある。

4. このコンセンサス構築のプロセスで、初めて、我々が何を大切にするのかが浮き彫りになると共に、「覚悟」ができることになり、その範囲内で最大限可能な大胆な施策も検討できるようになる。逆に言えば、現状の社会に「新しい仕組みを加える」だけの「付け足し」的な対策では、この危機は乗り越えられない。

5. 一方で、財政構造に目を向けると、国家として地方として何をなすべきかという公助制度自体も根本的に議論し直す必要があると考える。厳しい財政制約の下で、無駄を徹底的に排除することは当然だとしても、マイナンバー制度を徹底的に有効活用し、年金・医療・介護などの公助を本当に必要とする人に手厚い保障の手を差し伸べる一方で、根本原因である少子化に十分な財源を投入し、国民の結婚・妊娠・出産・育児という希望が叶えられる環境を整えなければ、結婚率・出生率は改善せず、人口減少を通じて、将来財政は圧迫する一方である。例えば、次世代への投資である家族関係社会支出の対GDP比率に目を向けると、我が国の場合約1%であるが、出生率が回復している欧州諸国は3%となっており、社会保障財源の配分について大いに議論の余地がある。

6. 人口減少の基本的メカニズムは、既に多くの場所で指摘されているが、地方の経済雇用環境が大都市部に比べ著しく低下している等の理由により若年層が大都市(特に東京)へ移住・定住化し、それが社会的意識の変化等も相まって核家族化の進展につながり、家族や地域の助け合いという自助・共助の機能が減退し、結婚・妊娠・出産・育児の環境悪化を通じて、未婚化・晩婚化・晩産化が進展することと、核家族化によって保育や介護などの公助財政需要が増大し、財政圧迫を通じて少子化財源の不足となり、さらなる少子化の進展につながっていることと、東京などの都市部の結婚率・出生率は著しく低いため、そうした地域への人口流入により人口減少に拍車がかかっていることと、地方では人口が流出するから経済雇用環境などの活力が減退し、減退するから更に人口が流出する、というプロセスが主だったものである。だからこそ、東京の一極集中の解消、地方創生、少子化対策を連携して進めていかなければならない。

7. 都市部と地方では、そうした環境悪化の理由が著しく異なり、高齢化が進む都市部と人口減少が進む地方とでは対処すべき課題が異なる上、地方はより複雑で多様である。従って、地域ごとの多様な現実にしっかりとスポットを当てた上で、マクロとミクロの両面から、時間軸をしっかり見据え、あらゆる施策を通じて自助・共助を促すと共に、必要十分な公助を地域ごとに確立することが必要不可欠である。

8. 然るに地方創生と少子化対策は表裏一体であるべきだが、現在、政策上の明確な連携の形が見えるよう一層の連携強化を進めて行くことが重要である。このためには、地方創生と連携すべき指標を充実するなど、少子化対策の見える化を進める必要がある。

9. 一方で、各自治体独自の課題抽出と解決法の模索が必要となることは論を俟たないが、国というマクロ視点も必須である。すなわち、一定期間は減少が避けられない人口と、現存の1700の自治体との関係を真剣に考えれば、現在策定中の国土形成計画において「どの地域にどれくらいの人口が棲まうべきか」という大きな方向性が示されるべきである。その際、「人口が最も回復し易い」という視点と、「日本の国際的な相対的国力を維持(成長力の維持)する」という視点の、時間軸も考慮した資源の最適配置を十分に議論することも重要と考える。

帰納的視点

1. 経済的な理由や社会的な意識の変化等により晩婚化・未婚化が進んでおり、初産年齢が上がって生涯出産数が低下している。逆に言えば、適齢期に結婚し、適齢期に出産するインセンティブが極めて薄弱であることを意味する。従って、公的制度による直接的なインセンティブを創出する議論が必要である。

2. 一方で、晩婚化・未婚化の抑止と改善のための環境整備が必要であることは論を俟たない。晩婚化・晩産化の主だった理由は、経済的なものと雇用環境、更には女性の育児に対する負担感の増大である。

3. 就業しながら出産・育児できる環境が不十分なため、出産を機に女性が離職しなければならない。女性の離職は男性の長時間労働を生み、夫婦の家事分担を妨げるため、結果的に女性の育児負担を増大させ、出産意欲も低下するという悪循環を生んでいる。更に言えば、長時間労働により、定時以降の子供の保育と教育の需要が増し、介護に携われないから公的介護の需要が増し、女性が働けないから年金需要が増し、企業は新規雇用を控えるため若者の就業機会が失われ、結果的に公的就業支援の需要が増え、結果的にすべて公的福祉の需要となって政府の財政を圧迫している。

4. 現在の税と社会保障は、片働き世帯を一つの理想モデルとして構築された制度であり、女性活躍といった社会構造の変化に対応しておらず、共働き子育て世帯が不利になるため、結婚・出産への動機を妨げている。また、制度的断層により、ライフステージに合わせた多様な働き方がしにくい環境にあり、特に女性の社会復帰を妨げている。

5. 核家族化によって家族や地域の共助を求められない世帯が最も必要としている妊娠・出産・育児期の相談所(例えば北欧に見られるようなネウボラ)や、働く女性などが育児期に最も必要としている病児育児施設が皆無に近く、また、産科小児科医師や産科情報自体の不足など分娩環境も不十分であり、安心して出産・育児できる環境が整っていない。

6. 高齢出産に対するリスクなどの教育制度が皆無に近いため、国民の生殖に関する正しい知識が乏しく、このことが結婚や妊娠・出産の時期に意識的に影響を与え、結果的に晩婚晩産化を助長している。また、人工中絶件数が高く、多くの嬰児の命が失われている。

7. 子供は宝物だという社会意識が低下しており、例えば保育園騒音による住民の反対運動等の悲しい事実が顕在化しており、間接的に出産意欲の低下につながっている。

 

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