ベラルーシ訪問

ベラルーシ議会の招待により同国ミンスクを訪問して参りました。

一時は欧州最後の独裁国家などと評されることもありましたが、本当はどうなのかということも併せて、書き残しておきたいと思います。

さて、これまで日本とベラルーシは公式招待による議会交流は全くありませんでしたが、数年前より在京大使の働きかけにより機運が高まり、今年初めてベラルーシ側議会の公式招待を頂いたので、日本ベラルーシ友好議連で検討した結果(私は事務局を務めてます)、以下の理由で招待を謹んで受けることとしました。

1、今年がチェルノブイリ原発事故30周年であること、2、さらに東北大震災5周年であること、3、大規模原発事故処理の豊富な経験と関連産業を有する数少ない国としてこれまで以上に情報共有と協力推進を行う必要があること(これまでも両国間の協力協定があって事務的に相互協力を進めています)、4、ウクライナ問題ではウクライナ側ロシア側双方とも積極的な仲裁活動を行っており成果を上げているなど我が国外交にとって重要性が徐々に増していること、5、EUや米国の経済制裁が今年解除されたこと、など。

ベラルーシとはどんな国か?

ではそのベラルーシはどんな国かと言うと、ソ連崩壊で独立した国で、ウクライナ、ポーランド、バルト三国、ロシアに囲まれた人口1000万人弱の重工業が盛んな国です。

30年前のチェルノブイリ原発事故でもっとも被害を受けた国としても有名で、人口の7割が何らかの被害を受け、国土の2割が放射能で汚染されたと言われています。現在でも対策のための種々の国家プログラムが動いています。

一方で現在では、お隣のバルト三国やウクライナ同様にIT産業が盛んで、例えば世界的に有名なVIBER(SNSアプリ:最近日本の楽天に巨額で買収された)は同国の会社のものだったりしますし、スマホのゲームアプリでギネス記録を複数持つほど成長したWargaming社というのもあります。また、放射能測定器の分野ではPolimaster社というこの分野では世界でも有名な企業もあります(腕時計型放射能測定器はシンボルかもしれません)。

本当に独裁国家なのか?

政治的にはどうかと言えば、独立以来、ルカシェンコ大統領が現在まで元首を務めており、選挙の公正性や報道の自由度などが国際社会から問題視されていました。例えば、20年前くらいは反体制派の失踪が続いていたり、憲法上の大統領の三選禁止条項を撤廃したり、大統領選挙で対立候補など反対勢力が大統領側の選挙違反を指摘し抗議行動を起こした際に一部が暴徒化し、その鎮圧で対立候補を含む700人程度を拘束したことがありました。やんちゃな大統領だったのかもしれません。

極最近でも依然欧州から死刑廃止や集会の自由の指摘をされていますが、これについては歴史的文化的背景もあるので一気には改善できない部分はあるのだと思います。実際に死刑は日本でも実施されていますし、世論調査の結果に基づくものと言っても過言ではない。集会の自由も、日本で言えば政党要件が高いということであってしかも政党制度が前提となっていない国で欧米と同じようにすぐにしろというのも酷な話に聞こえます。

いずれにせよ、こうしたことが背景で、欧州からは欧州最後の独裁国家などと評されることもあり、実際にEUやアメリカから経済制裁を受けていました。ただ、このように書くと、北朝鮮と同様なとんでもない国に聞こえると思いますが、今年に入ってようやくそうした経済制裁は解除されました。近年のウクライナ問題に対する取り組みや、EUとの関係改善に向けた多くの取り組みが評価されてのことです。特にウクライナ危機では、ロシアを表立っては非難しないまでも、ロシアが提案していた連邦化には絶対に反対と明言し、徹底的に双方の話し合い継続を訴え、和平交渉の場所を提供し、ミンスク停戦合意に持って行ったり、ウクライナからの移民を積極的に受け入れ、住居や仕事の斡旋、医療・年金・子女教育の措置を講じるなど、積極的な国際貢献を行っています。

一方で同国に訪問して感じた雰囲気も、欧州最後の独裁国家というレッテルとは程遠いものでした。

つまり、国民は独裁と思っておらず普通に暮らしているということ。経済的に言えば、物価こそデノミを実行しなければならないほど上昇しているものの、失業率は2%程度で、1人あたりのGDPが6000ドルとは思えないほど人々は比較的豊かな生活をしているように見えます。実際に市民に聞いてみると、独裁と言われるような政府からの押し付けや強制があるわけでは全くなく、インターネットが突然遮断されることもなく、報道が規制されているわけでもなく、首都ミンスクでは人々は買い物やら散歩やらを普通に楽しめる、極めて住みやすそうな綺麗な街であって、誤解を恐れずに言えば極めて普通の国でした。

住民にとってみれば、そとから何を言われようがどうぞ、といった感じで、大統領経済対策しっかりして、という感じなのだと思います。議会も与党が圧倒的に強く政治的には安定しているように見えます。

今回の訪問では、選挙で選ばれた議会人との意見交換を度々することがありましたが、独裁と呼ばれることによる風評被害による国力低下を痛く心配していました。

いずれにせよ、欧州最後の独裁国家などと称されるのは、欧州による国際政治的意図があってのことで、政治的な背景があるなら理解できなくはないですが、国際政治の状況も現地の状況も全く取材どころか把握もせずに日本のメディアが軽々に政治的背景も全くなく独裁国家と放送するのは極めて遺憾に思います(先日私自身がそうした放送を見ました)。

日本として何が重要なのか

さて、日本にとっての重要性について、国際政治的な観点は、ウクライナ問題で顕在化したベラルーシのロシアとの仲裁機能(意外とロシアにべったりの国ではなかった)と、今後のロシア外交を睨んでの重要性ということになるのですが、今回は2番目の理由である投資対象あるいはIT国家としての重要性について触れてみたいと思います。

結論から入れば、わざとビジネスライクにドライに書くと、人材は優秀であって、賃金が安く、そうした人材が簡単に調達できる、ということに尽きます。例えば優秀な人材ということになると、先日も触れたイスラエルが今世界的にはホットですが、賃金で言えば5倍も違います。では能力や経験が劣るのではないかというと、全くそういうことはなく、実際に世界を牽引するソフトメーカもでてきています。

国家としての戦略は単純なもので、とにかくハイテクパークなる国家戦略特区をつくり、事務所も貸し、税制優遇を行い、人材が集まるようにしている。なので国家が国際的に先進的な基盤を作るというよりも、とにかく人材をプールできる枠を作るというもの。

このハイテクパークの社長さんともお話をしましたが、日本としても税制まで踏み込めれば多いに参考にすべきと感じましたが、逆にこうした国の優秀な人材をパートナーとして活用させていただくこともこれからのIT人材不足の時代には考えていかなければならないのかもしれません。

http://mfa.gov.by/en/press/news_mfa/c796fd606e253ec8.html

http://m.eng.belta.by/politics/view/belarus-interested-in-long-term-ties-with-major-japanese-corporations-93089-2016/

http://m.eng.belta.by/economics/view/japan-interested-in-investing-in-belarusian-high-tech-economy-93046-2016/

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グミンスキー下院副議長

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セニコ上院外交委員長

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ブシコ下院外交委員長(訪問中全ての工程に同席して頂いた。私の経験では非常に非常に珍しいことです)

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空港にはロシア製と思われる日本ではあまり見かけない形の飛行機。旧ソ連県内であることを実感できる瞬間でもあります。

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ポリマスター社の40代女性の会長さんがされていた放射線測定装置付きの腕時計。5万円くらいだそうな。アマゾンオークションでは20万円のものも見かけました。

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グミンスキー下院副議長との公式会談

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リバコフ外務次官との会談下院議会。

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本会議場で。地域ごとに議席が決まっているのだそうだ。

 

 
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