
丙午(ひのえうま)の新しい年を迎えました。謹んで新年のお慶びを申し上げます。皆様方には日頃から一方ならぬご厚情を賜っておりますことに、心から厚く御礼申し上げます。
干支の中でも丙午ほど聞き慣れた干支はないように思います。言うまでもなく、丙午は燃え盛る太陽や夏の盛りを表し、強い輝きやダイナミックさ、あるいは陽気さや派手さを象徴しているのですが、これが為に昔の日本には、丙午に生まれた女性は気性が激しく夫の命を縮める、という謎の迷信が伝わっていました。
事実、広く知られているように、前回丙午の1966年の出生数を見ると、既に人類が月に行こうとしている時代であったにも拘わらず、25%もの有意な減少が見られます。因みに、私の実姉も丙午ですが、性格は全く逆の控えめで大人しく落ち着いた人間で、丙午が故に非難されたり苦に感じたことはなく、夫もピンピンしています。我が両親が、こうした謎の迷信にビクともせずに、姉をこの世に送り出したことを、私は心の中で密かに誇らしく思っています。
あくまで想像ですが、この年に出生数が少なかったのは、迷信を本気で信じた人が多かったと言うよりも、むしろ、このような迷信があるのに敢えてそれに抗うこと、に対する周囲の暗黙の非難を避けようとしたのではないか、という子を思う親心、と考えた方が合理的に感じます。
世界に共通する沈没船ジョークというのがあります。沈没しかかっている船で、船長が乗客を海に飛び込ませなければならないときに、船長が言うべき言葉に国民性が現れる、と言うものです。完全なステレオタイプで、現代的には触れることも憚られますが、敢えて申し上げれば、例えばアメリカ人には「飛び込めばヒーローになれるぞ」、ドイツ人には「飛び込むのがルールだ」、イギリス人には「紳士は飛び込むものだ」、なのですが、日本人にはご想像の通り、「皆さん飛び込んでますよ」なのです。
日本は同調圧力が高い国民性だと、海外からも言われています。個人よりも集団の調和や秩序を重んじる日本独自の価値観や文化的背景が影響していると解説されることが多く、これは時代が下っても大して変わらないように思います。問題は、技術の進歩です。丙午迷信が拡散された江戸時代では、歌舞伎や浄瑠璃がメディアの役割を担っていたそうですが、現代におけるSNSは、拡散の規模とスピードが圧倒的に高く、影響力は計り知れません。
今、世界中でSNSが問題となっています。閉鎖的なコミュニティーで流布される、主要メディアに掲載されない情報を、自分達だけ知っている「本当の情報」と固く信じ、意見や思想が増幅する「エコーチェンバー現象」や、個人個人の趣味・嗜好に合わせた情報が優先的に表示されるために意見や思考がいつの間にか偏る「フィルターバブル現象」、加えて情報提供が質より注目度で収益化されるため、事実とはかけ離れた目立つことに特化した情報ばかりが巷に溢れる「アテンションエコノミー」などです。
中には、それらしい情報を自動的に無尽蔵に拡散できる「AIボット」と呼ばれるプログラムがあります。ソースコードや実装方法は誰でも簡単に調べることができるため、比較的簡単に作ることができます。事業者が広告や宣伝であることを隠してマーケティングすることを「ステルスマーケティング(ステマ)」と呼びますが、これは既に法的に規制対象となっています。しかし、外国勢力による悪意の影響工作や選挙公報としては、現時点で何ら規制されておらず、民主主義の根幹までもが揺らいでおり、国際政治上の武器にさえなりつつあります。
こうした時代に政治家として強く感じることは、分厚い中間層の復活です。情報過多な時代、信頼すべき拠り所が揺らいでいるなかで、国民が出所真偽不明な情報に右往左往せずに自らを拠り所とできる環境、すなわち経済的豊かさを感じられる環境を構築することが何よりも重要だと確信しています。そして政治は税と言われるように、税制はその中核的役割を果たします。しっかりと担っていきたいと思います。
最後になりましたが、今年一年、皆様にとりまして素晴らしい一年となりますよう、ご隆盛とご活躍そしてご健康を、心から念じてご挨拶と致します。