いわゆるご年配の方のための介護施設をご覧になった方は多いと思いますが、最近の施設はとても綺麗で快適、個室が完備されていて、過ごしやすそうだと思われた方も多いと思います。今日は、その特別養護老人ホーム、いわゆる特養について書いてみたいと思います。
結論から言えば、国は個室型を随分と政策誘導してきましたが、一部報道にもあったように、ここにきて、少し軌道修正をかけ、相部屋型も認めることを検討しているようで、私自身は大変喜ばしいことだと思っています。
なんのことか。そしてなぜ喜ばしいか。
国の分類だと、特養には、多少型(相部屋型)とユニット型(個室型)があるのですが、10年ほど前から、国はユニット型に誘導をしてきた。理由は単純明快。入居者にも豊かな生活とプライバシーが必要だとの考えです。
それはその通りです。何年も他人と同一の部屋で過ごすことになるわけですから、できれば個人の空間が欲しいと普通は思うでしょう。この理由は全く否定しません。少し深堀して考えれば、多くの場合、どうするかという判断は、入居希望者ご自身というよりは、ご家族が判断されるということも考えなくてはいけません。
「個室に入れてあげたいけど、そうすると先立つものが・・・」とお考えのご家族が多くいても不思議ではありませんし、その結果、費用の安い多少型を入居者が余儀なくされ、入居者の尊厳が守られないということは、注意して慎重に考えなければなりません。
しかしだからと言って、すべてユニット型だ、ということにしてしまうと、一体、入居者やご家族、そして国民の負担はどのように考えれば良いのか。「できれば個室がいいけれど、そんな高額なら、相部屋でもいいわ」、とか「そんな高額な負担を家族にかけられないわ」、と思われる入居者もいらっしゃるはず。
「孤独や寂しさよりも人の息が聞こえる状態の方が落ち着くわ」という方もいらっしゃる。また入居者のご家族がすでに年金受給者である場合も少なからず見受けられます。入居者が高額の個室を余儀なくされ、ご家族が年金で負担する、そんな状態に違和感を感じざるを得ません。
他にも問題は感じます。例えば事業者は、多床型とユニット型を併設して、入居者のご希望になるべく添えるように頑張る。当たり前でしょう。私が事業者であってもこう考えると思います。ところが、この二つ、全く別のルールで運用されているので、極論すれば全く別々に運営しなければならない。例えば介護職員は兼任できないなどです。同じ目的だろうよと思うのですが、こんなことで大丈夫かと思っています。
もしユニット型に固執し続けるのであれば、そのユートピア的論法を続けても結構ですが、その負担の試算を明確にしなければなりません。
そして最大に重要なことは、ころころ制度設計を変えない事。そのたびに現場は混乱しているのです。混乱しているだけではありません。実際に、方針変更で巨額の金銭負担を強いられた事業者もいらっしゃいます。注意しなければなりません。
だからこそ、これから、介護は真剣に、根本的な制度設計をしていかなければならないと感じています。