最後の砦?トルコ共和国

最近デモが激化していることで有名になっているトルコに強い関心を持っています。より正確には、シリアなどの中東情勢やそのアメリカの関与と、エネルギー政策です。数日前にもアラブの春と中東アフリカ政策と日本の関係を書かせていただきましたが、トルコは親アメリカ政策を歴史上採り続けており、アメリカもトルコを砦と思っている節があります。

今日、改めて自民党本部でトルコ内政に関する勉強会があり、中東の複雑さを再認識しました。紀元前後から言えば、トルコはローマ帝国の一部であり、5世紀の西ローマ帝国崩壊以降は東ローマ帝国の首都、コンスタンティノポリス(イスタンブール)として栄えた地域です。そして、15世紀の東ローマ帝国崩壊から、イスラムの支配が及び、オスマン帝国として繁栄を続け、ハドリアヌス時代のローマ帝国を彷彿とさせる広大な地域を統治するほどになった。そして、近代に入って第一次大戦前後になると、ナショナリズムの勃興によって完全に崩壊。その後、独立運動の英雄、アタチュルクが立ち上がり、現在のトルコの領土を勝ち取り、オスマン家を追放して、世俗主義の近代西洋風イスラム国家を作りました。

爾来、基本的にはトルコは親欧米国家でありつづけましたが、一方で今世紀に入って政治腐敗が横行し、それが嫌悪され、イスラム教保守主義が台頭し、現在のエルドアン首相率いる与党公正発展党がトルコ周辺地域に住む保守層から高い支持を得て安定した政権与党となっています。ただ、旧来の非宗教的な世俗主義が衰退したわけではなく、相変わらずこの世俗主義と保守主義の対立は、根深いものとなっているのが問題の一つです。

もう一つの問題がクルド人問題です。クルド人はアラブ人やトルコ人、ペルシャ人に次いで世界最大の国家を持たない民族集団ですが、トルコでは、政権から迫害されており、1980年代から常に国家にとっての悩みの種で、幾多のテロを経験しています。トルコの今回の暴動は、クルド人問題や前述の宗教感が直接のきっかけに繋がった節はなさそうで、どちらかと言えば強すぎて傲慢になりすぎた与党に嫌気をさした住民による単純な謀反がきっかけになっています。しかし、徐々にクルド人問題など、人種間対立につながりつつあるところが問題を複雑化しています。

傲慢になるとかくも弱体化するのかという典型で、あらためて謙虚さや真摯さを大切にしなければと思いますが、そうした2つの複雑な対立軸のなかで、混乱を放置しておくことは国際社会の利益に全く反します。なぜならば、トルコは中東の複雑な関係の最後の砦となっているからで、トルコの混乱は、中東全体に影響し、ひいてはアフリカまで影響を及ぼす可能性すら秘めています。

もちろん、イスラエルとならんでアメリカが信頼する中東国のトルコを、アメリカが放って置くはずはありません。事実、関係が悪くなっているイスラエルとトルコの間をとる作業をアメリカは行っています。しかし、内向き化が進むアメリカに中東関与を続ける体力があるのか、そして、先のブログでも触れましたが、アジアシフトを鮮明に打ち出しているアメリカですから、中東関与のインセンティブをアメリカは持ち続けることができるのか。日本にとっ重要な地域ですので、大きな関心をもちつづける必要があります。エルトゥールル号事件を風化させてはならないのです。

更に言えば、日本独自の中東関与と人間関係を築いておかなければなりません。旧来中東諸国の対日関心はアメリカとの関係で築かれていました。中東諸国にとって、新米とはなれないけど、アメリカに近いとされる日本とは堂々と付き合える。権力者に擦り寄りたいけど擦り寄ると周囲の友達から訝しく見られるけど、権力者の友達とは堂々と付き合っても訝しくは見られない。そんな対日関心でした。しかしその対日関心も最近は揺らいでいます。なぜならば、アメリカの存在感が薄らいでいるので、日本に擦り寄らなくてもアメリカに対峙できるようになったからです。

イランなど旧来は親交の深かった国とも微妙な空気感が漂っていると言われます。日本としては、イランのような国とは積極的な人間関係を築いておくべきではないかと思っています。

IMG_1302-s

写真:中曽根参議院議員会長・福田衆議院議員らとイラン大使館でイラン大使と

カテゴリー: オピニオン, 外交安保 この記事のURL