高校授業料無償化について

高校授業料の無償化は民主政権の目玉政策として導入されたもので、「教育に関わる経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的」とするものでした。

もう一度申し上げますと、教育機会均等に寄与するために経済的負担の軽減を図る政策ですから、逆に言えば経済的理由によって教育機会が奪われているという現状認識と分析があったということになります。がんばる子供達、志のある子供達が、親の経済的理由で高校にいけなくなることを避けるということには、全く異論はありませんが、現在の高校進学率は95%を超えています。95%がすでに進学しているのに、どうして高校生がいる「全世帯」を給付対象にするのか、結果として4000億円もの税金を投入するのか、が理解できません。

まだ私には高校生の子供はいませんが、もちろん対象者からみれば助かることこの上ない話ではあります。東京でサラリーマンをしていた時分は年収を考えれば月々の家計簿と睨めっこしなければならない状態でしたので、月に1万円の授業料出費がなくなるのは非常に助かるものだと理解できます。しかし、息子を高校に行かせるのが精いっぱいで、テニスラケットや塾はおろか、参考書も買ってあげれない本当に困っている人がいる隣で、たいして困っていないのに困った顔をする人が、同じだけの恩恵を国家から享受するというのは極めて私には疑問なのです。

今の社会保障制度の根本理由はここにあると思っています。困っていなかったり、困ってるふりをする人が給付を受けるために、本当に困っている人に十分な給付ができないのです。

この政策、少子化対策が目的という見方だとしても疑問です。将来の経済的負担が大きいから子供を作ることをためらっている方々にとってこの政策はプラスに働くという見方もできなくもありませんが、少子化の本質は未婚率です。私が生まれた1970年前後の生涯未婚率は男女ともに2〜3%。就職した1990年前後は男女ともにに5%。しかしここから劇的に増え、現在では男20%、女10%になっています。いわゆる適齢期の未婚率は90年代から驚くほど高くなっています。そして文化的に婚外子率は低く、既婚者世帯の出生率は2を超えています。この事実からこの政策は、少子化対策の側面は高いとは言えず、やはり児童福祉と考えるべきです。

ついでに言えば、私立と公立の関係。現行制度は、公立は実質無償。私立は所得に応じて減額されますが、私立はお金持ちが行く、という認識は間違いです。公立に受験して残念ながら合格しなかった場合に私立に行くというケースも多々あります。経済的にゆとりのある世帯が塾や予備校に通わせて合格したら無料。でなければ有料というのであれば、楽な世帯はますます楽になる。酷い世の中ではないでしょうか。私立への保障を拡大すべきなのです。

以上から理屈を申し上げると、所得制限を行い、私立への保障を拡大すべきです。ただ、所得制限と言っても世帯構成(子供の数)を考慮すべきです。子宝貧乏なんかになりたくないなどと余計なことを考えないですむ政策にしなければなりません。

先般の党の文部科学部会で発表された現状の方向性は、所得制限が900万だとか。詳細不明ですが、平均所得よりも高い世帯が対象とはピンときません。世帯構成に関する問題も議論したいところです。