国会での統計問題の議論が昭和感満載なのが残念でなりません。とにかく政治を政局ばかりのものから中身勝負のものに変えていかねばなりません。統計は国家の基本。戦後直後に吉田茂がマッカーサーに「日本の統計は間違いだらけじゃないか」と問われ「日本の統計が正しければ戦争などしていません、間違っていたから負けたのです」と答えたという話は有名ですが、何をするにも、自分の状態が見えていないと、戦略など立てられるはずがありません。だから、今般の統計問題は大問題なのです。ただ、国会の議論の方向が180度違う。何が起きていたのか理解できていないのか、そうじゃなければ歌舞伎を演じているのか、どちらかです。
分かりやすく例えを挙げると、賃金が約1万円の人が100人いて平均を求めるには100人分の賃金を足し合わせて100で割りますよね。平均がぴったり1万円になったとしましょう。一方、100人全員調べるのは大変だから、10人に限定抽出調査にしたとします(※)。10人の賃金を合算したら10万円になった。なので平均は10万円/100で1000円。ではないですよね。これが起こっていた。抽出調査にするなら公式に変更手続きをしないといけなかったのにしなかったという大問題と、100で割っちゃったという技術的問題。(※:統計理論上のよくある操作です。その場合、誤差が±〇%という数値がでてくるはずです。)
で何年もこれが間違って行われていたのだとか。
で、間違ってたので賃金は低くでることにお気づきだと思います。だから、アベノミクスを偽装している、という主張は、理屈に合いません。そうじゃないですよね。給付が正しく行われなかったところが最大の問題なのです。正しい手法で計算しなおしたら、実際の賃金はもっと高かった。高かったから、社会保障給付を追加で給付する必要がでてきて(雇用保険とか)、予算を組んで手当をした。お粗末な話です。受給者にはお詫びの仕様もありません。
上昇率は下がったじゃないか、偽装だ、との歌舞伎主張も見受けますが、数値って毎月変動しますよね。数年前に、野党は年金基金の運用が大赤字だ、と歌舞伎をしてました。株価をチャートを見たことがあれば分かると思いますが、小刻みに上がったり下がったりしながら、大刻みで上がったり下がったりします。過去7年は上昇基調にありますが当然その間の一部を切り出せば下がっているところもあります。その当時、確かアベノミクス大失敗、〇兆円も損しているじゃないか、とのご主張でした。全国民が不安になる。こんなのグラフを見せればいいのではないかと思うのですが、そういう主張をされる方はグラフは見せない。理由は、歌舞伎がしたいから。
余談ですが、そもそも、私、この政治の世界に入ってきて大変驚いたのが、みんな4%とか23億円とかのスタティックな数値を見て議論するのです。理系はほとんどそんなことしません。グラフを書かいてトレンドを見ないと意味がないと思う。私も残念ながら慣れてきてしまいましたが。
いずれにせよ、こうした問題を議論するのに、森友加計と同様に再び忖度に結び付ける論、つまり経済政策を打ち出す安倍総理に忖度して役所が勝手に変えたのだ、恐ろしい政権だ、という主張では本質に迫れません。先にも書いたように、長年間違ってきたわけですから、自民が野党であったときの政権も忖度されていたことになります。なぞですね、政治というのは。
もう一度書きますが、統計は国家そのものです。だから、この言語道断の問題は解消しなければなりませんし、二度と起きてはなりません。そのために、チェック機能をどうするのか、複数の代替統計もとるべきではないか、どの程度の予算と人員を確保すべきなのか、など、そういう議論の方向にしていかなければなりません。政局歌舞伎をする方には無理だと思いますが。