月と祖父とアメリカのお婆ちゃん

 
中秋の名月。落ち着いて月でも見ながら団子を食して秋を感じたい気分なのですが、今日はいたるところでお月見の会があり、そうもいかず、結局右往左往して文化的雰囲気に浸る余裕はありませんでした。毎年の事ながら、私の住んでいるコミュニティーのお月見会には、がんばったものの間に合いませんでした。これが毎年の悔いの一つなのですが、地元の毎年恒例のお月見会一つに金子正則知事を偲ぶ月見の会というのがあります。私にとって月と言えば金子知事であり、金子知事と言えばアメリカを思い出させます。

アメリカの大学に研究者として籍を置いていたときのこと。その大学はベトナム戦争後の反戦運動やリベラル思想の中心地であり、ヒッピームーブメントの発祥の地であることは、政治とは当時無関係な世界にいた私でも知っていました。であればこそ、とにかくそうした思想の源流がどこにあるのか、肌で感じてみたくなるのは人間の性であり、渡米直後の2〜3ヶ月は地元の人が出没するところには良く顔をだしていました。

そして、ひょんなことで知り合ったお婆ちゃん。お招きいただいたのがきっかけでしたが、こちらも先ほどの源流に触れられるのではという下心もあり、おばあちゃんとしても話相手ができて嬉しいだろうと独りよがりのWinWinケースだと勝手に思い込んで、毎週訪ねては30分くらいのおしゃべりをしに行くようになりました。

このお婆ちゃん、驚いたことに、戦後の混乱期に香川県にご主人と共に暫く滞在され、金子知事のもとでアメリカ文化を日本に広める活動をしておられたとのことでした(日本で言えば国際交流基金の活動でしょうか)。当然、私の祖父の大野乾も良くご存知とのこと。祖父の大野は、当時としては珍しく外国語専門の大学に行くほどに海外に興味があったのか、恐らく、副知事としてこうしたお婆ちゃんの仕事にも大きな関心を示したに違いありません。

私自身、この祖父が他界してからこの世に生を授かったので、祖父と直接接することはありませんでしたが、中秋の満月は、祖父やアメリカのお婆ちゃんという素敵な思い出を毎年プレゼントしてくれます。