郵便グループの将来像

郵便局関係の研修会で犬童周作(いんどうしゅうさく)さんの講演を聞く機会があり、膝を打つ思いがしました。先の衆院選で、私は地域の生活基盤を守る必要性を訴えの一つとして掲げ、そのなかの例として、郵便局ネットワークの活用を挙げていました。犬童さんのお話は、地域社会に必要なデジタル化のための基盤の一部を郵便局グループに担ってもらうことで、地域社会に役立つ郵便グループにするということを柱としたものです。私は郵便グループを社会課題解決事業として捉えていたので、必ずしもデジタル化に焦点を当てたものではありませんでしたが、指向する出口が全く同じであったので、膝を打つ思いだったということでした。

郵便グループは約20年前の郵政民営化後に幾多の困難に直面しながら現在に至っていますが、現在は極めて困難な状況に置かれており、持続可能性に黄色信号が灯っています。今年、政界では、郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟が持続可能性を高めるために法改正を試みましたが、改正するには至りませんでした。

改正の主だった柱は、グループ会社の統合、金融事業株の保有継続と規制緩和、公共サービスの本業化、財政支援、外資規制などですが、その中で金融規制緩和に議論の焦点が当たり、党内から異論があったためです。その異論は違和感のないものですが、残念だったのがすべてを断念せざるを得なかったことです。

特に重要なのが公共サービスです。郵便グループは全国規模の巨大なネットワークを持っており、そのアセットは極めて魅力的です。郵便事業以外の社会課題解決のための事業に乗り出す幅があれば、地方創生にも資す大きな価値を生み出す可能性があります。単に市役所の窓口業務の一部を担って頂くという話では決してなく、また、事業拡大のために郵便局職員に新たな負担をお願いするということでもなく、犬童さんがおっしゃっているような、例えば地方に必要な地方のデジタルプラットフォームを担って頂くという例が示しているように、地域課題解決のハブを担える組織になれるということです。

既に郵便グループでは各自治体との包括連携協定を締結しています。残る問題は、何の目的で誰と何を組んで何をするかです。単純な連携によるフローの価値創造だけではなく、社会課題解決事業として、地域社会に対する課題解決インパクトを目的とし、それを指標とした資金循環を行政と協調して生み出し、社会課題というストック価値を高めて、結果的にフローを生んでいくような、そうした事業を組成していくべきです。

その方向にしか開ける道は無いように思います。