国際医療福祉大学院の高橋泰教授によると、現在推定されている人口統計から計算すると、介護需要は2030年にピークを迎え、現在より49.7%増加する一方で、医療需要は2025年で11.1%増加とのこと(費用換算)。そして、地域によって病院や介護施設などのリソースや人口動態も違うので、需給バランスが地域によって当然違ってくることになります。
第一に、供給側の病院や介護施設などのリソースから見ると、それらの機能の戦略をどうするのかということです。どういうことかと言えば、75歳以上のご年配者が多くなり、75歳以下の人口が減少してくるので、急性期医療など治療目的の機能よりも、住介護などの地域包括ケア病院にシフトしていかなければなりません。そしてこれは実際に国の方針で示されている方向です。
第二に、日本全体として、需給のバランスそのものの戦略をどのように立てるかです。例えば75以上の高齢者人口の増加(1.5倍)を見越して、供給側も1.5倍にするのかどうかという問題です。また時間軸の議論も必要で、10〜20年に来るピークを越えればまた需要は下がってきます。人間誰しも老いるので、高齢者だけの問題ではありません。働く世代のやる気や死生観にも関係する問題です。真剣に慎重に考えていかなければなりません。
第三に、前述しましたが、地域によって病院や介護施設などの人口当たりのリソースや人口推移はかなり異なるので、医療介護の余力やその推移、そして需要ピークの時期や増加率は全く違う。したがって、地域ごとの機能やボリュームの戦略が必要なのと同時に、日本全体の戦略との摺合せが必要になってくるはずです。
第四に、ただし供給側の政策だけでは、どう考えても追いつかないので、需要側の調整が必要になります。何のことかと言えば、ご推察の通り、大都市から地方への人口移動です。
従って、供給側の機能とボリューム、需要側のボリューム、そしてそれらを勘案した地方ごとの医療介護戦略と日本全体の戦略が必要になってきます。
先の記事にも書きましたが、現在、地方版の総合戦略を地方が立案することになっています。その際、国は地域経済の分析ツールを提供することになっています。問題は、医療福祉関係やその他の分野の総合的な分析をどのように行うのか。どの程度国がその環境を提供するのかです。
なぜならば、現在は中小企業などの産業経済分析だけですが、地方創生の目的は、地方経済の活性化による経済好循環と併せて、人口減少問題に正面から取り組むことです。であるならば、産業政策だけではなく、医療福祉のみならず、雇用や農業も、総合分析できる環境が整っていなければなりません。どこまでできるか分かりませんが、努力はしていきたいと思っています。