自尊心を擽る生活保護

私が就職した90年代初頭はバブル崩壊直後。生活保護受給者人口は60万人と最低水準でした。ところがそれから単調増加して今年は200万人を越しています。国防予算とコンパラの政策経費がかかっています。長引く不況で職にありつけないことが主原因です。誰しも本当に困ることはあります。私の知人で生活保護受給者でメルマガを読んでいただいている方もいらっしゃいますが、悪循環から出てこれない状況は誰にも起こりえます。だから最低限の補償は絶対に必要です。

しかし、現在の政策では、種々の給付事業によって実質の対象者への公的支出が、日本人の平均年収より多くなっている場合があるとのこと。母子家庭生活保護世帯では、真面目に働く世帯より、恵まれる場合がでているとか。生活保護のほうが、普通の年金より多かったり、そして、無理やり離婚してまで受給しようとすることもあるとか。ちゃんと調べなければいけませんが、改善の余地がありそうです。

もちろん、大震災の被災者が義援金を受け取ったばかりに生活保護を打ち切られたり、不正受給根絶のために窓口による水際作戦を行ったり、数値目標が一人歩きをしてはなりません。また、受給世帯の健康状態も勘案しなければなりません。社会的な世相を反映してか、うつ病やうつ状態、あるいは適応傷害が関係することもあります。そもそも受給世帯が高齢者や母子家庭であるなど自立困難な世帯が多いのも考えなければなりません。

一方で、作家の塩野七生さんは失業対策について、義務の伴わない労働政策は自尊心をくすぶらないから失敗すると何かに書いていました。つまり、失業というのは、生活の手段を奪われるだけでなくて、自尊心を育む手段も奪われることだから、失業保険などの給付だけでは本質的になにも解決しないということです。例えば非正規労働者にも、それなりの社会的地位やら義務やらを与えて、さらに正規・非正規の労働市場の流動性を確保できれば経済的にも良い方向に向うはずだとおっしゃられていました。

その観点からすると、自尊心をくすぐる労働政策による生活保護というのが考えられないでしょうか。つまり健康で活動できるならば、社会的に意味のある仕事をしてもらい給与として給付する。もちろんワーキングプアの固定化に繋がることには注意をしなければなりませんし、当然上記で取り上げた問題点にも十分に配慮すべきです。しかし、生活保護→非正規労働者(公的)→非正規労働者→正規労働者とステップアップできる流動性あるならば、考えてみるべきです。オランダ病を克服したオランダモデルもあることですし。

景気対策が先決ですが、考えなければならない問題です。