農業について

農家の収入が上がる事。これが過去数年の我々の最大の命題でした。そして、現在、米の相対取引の価格は、3割強も上がっています。具体的に言えば、H26で60kgあたり11967円だったものが、H30で15686円(全銘柄年平均)。反収で言えば33000円が増えたことになります。

それ以前は戸別所得補償でした。1反あたり1.5万円の補償を国家が農家に対して行う制度でしたが、導入して何が起こったのかと言えば、米価が約1.5万円下落しました。農家にとって補助で1.5万円増えて、コメを売ったら売り上げが1.5万円減った。市場は1.5万円の補助金が農家に入っていることを知っているので、その分だけ市場価格が下落するということです。結果的に、農家に1.5万円補助を出したのではなく、流通販売業者に1.5万円だしたのと同じ効果という、世知辛い結果結果となりました。

市場はそれほど優しいものではありません。市場を構造的に理解し政策を打たなければ、こうしたお粗末な結果が生まれる。民主党批判をするつもりもありませんし、自民党もお粗末な政策をうったことがあるので、歴史上の反省としてとらえなければなりません。戸別所得補償全部を否定するつもりもありません。やり方が極めてお粗末だったということは肝に銘じなければなりません。

米価安定化の為に、H31年度は飼料用米などの戦略作物の助成制度を維持しています。また、主食用米からの転換を促す支援策や、備蓄米の安定的買取、それからナラシと呼ばれる収入減少影響緩和策も維持しています。

因みに良く指摘されるのは、国は大規模農家だけ支援して生産性を上げようとしているだろうというもの。民主党政権の前の自民党はそうでしたが、これは大きな転換を図っています。地域政策と産業政策の2つに明確に分けて両方推進をしようというもの。中山間地農業ルネッサンス事業、日本型直接支払い制度、スマート農業、鳥獣被害対策、棚田地域振興、そして農業農村整備事業、産地パワーアップ事業、畜産クラスター事業など、ありとあらゆる施策を実施しています。貿易関係では日米TAG交渉が話題になりますが、これもTPPレベル以上の市場アクセスは絶対に認めません。

輸出も出口の戦略として進めています。農産品の輸出額は3000億円程度で推移していましたが、1兆円の目標をかかげて取り組んできたところ、9000億円を超える勢いで伸びてきています。もちろん、目的は輸出を増やすことではなく、あくまで農家所得の向上です。逆に言えば、輸出をすれば農家が儲けるわけではない。丁寧に制度設計と運用を行って、目的を達成する努力をしていかなければなりません。