背番号制度のゆくえ

 
アメリカの大学に移籍したときのこと。上陸直後に大学や役場で事務手続きをしているとソーシャルセキュリティーカード(SSN・社会保険カード)なる、青い単なる紙切れを渡されたのですが、作りが貧弱なことこの上なく、子どものおもちゃのカードだってもっと最近はまともだと思い、しからば大して重要ではなかろうと財布にしまったのですが、後から後から何とこのカード(番号)が重要かを思い知らされることに相成りました。これがいわゆるアメリカ版の背番号制度で、銀行口座から免許から何から何までSSNプリーズと訪ねられ、税金の申告などもこの番号に基づいて行われます。社会保障制度の恩恵もこの番号で受けられるとのことでした。

そして日本でも共通番号制が本格的に検討されています。いわゆる税と社会保障の一体改革の大綱のなかで本格的に盛り込まれたものですが、大賛成です。プライバシーの問題を解決できれば導入は是非行うべきです。

遡れば最初に国会で議論されたのは佐藤内閣のときというからかなり古い。結局、国家権力による国民個人の個人情報の一元管理やプライバシーが問題とされて頓挫。爾来、何十年もどうようの議論をしている間に、年金が中に浮いたりというとんでもないことが起きています。

民主党はもともと国民総背番号制にはかなり慎重で、自民政権下では特に民主中の旧社会党勢力が反対をされていましたが、国民総背番号制度までいかずとも、納税者番号制度には前向き、というのが結党以来のスタンスのようです。

いまだ具体的な方向性は全くでていませんが、やるなら国民総背番号制に近いハード&ソフトの整備を行って欲しいと思っています。納税者番号制度だけだと何が起こるのか。例えば役所の発行する番号は所管省庁で独自のものを導入しています。当たり前ですが、運転免許証、旅券番号、基礎年金番号などなどです。共通管理したほうが効率化はもとより、運用上可能性が広がります。きめ細かな行政サービスも可能になります。納税者番号だけにするのはもったいないと思います。

一方でプライバシーの問題。まず法整備を進めるべきです。今、個人情報が云々とうるさい、世知
辛い世の中になりましたが、役所の人が仮に悪さをしたら、今のところの罰則規定は2年以下の懲役か100万円以下の罰金です(行政機関個人情報保護法53条)。こんなんですよ。罰則が低すぎる。こういうところから整備していかなければならないと思います。

その上で、共通番号制の導入はハード面はいいとしても、どのように運用するのか、何ができるようになるのか、プラス思考でしっかりと議論しなければなりません。情報把握を十分していれば、災害時に義援金で生活保護が打ち切られたりといったことがないよう、きめ細かなサービスが可能になるはずです。あるいは、将来的に必然となる消費税増税の際に負担が増える低所得者層の捕捉と給付による補償というサービスをきめ細かにするなどといった話です。

国民総背番号制度の導入に際して、うがった見方として、税の捕捉率の話をされる方がいらっしゃいます。つまり、お金持ちの節税や脱税が同制度の導入によってやりにくくなるから、そういう方々と政治の癒着が導入を遅らせていた、という説のようです。事実とすれば全く憤懣やるかたなしと言えますが、昔はトーゴーサン(10・5・3)やクロヨン(9・6・4)といわれていたサラリーマン・自営業者・1次産業従事者の所得捕捉率の格差は、今では相当改善されているとのこと。あまり考え難い話ですが、導入を促進する話ではあります。

いずれにせよ、国民の情報を知らずして、より良いサービスなどできるわけなく、国民を守ろうという政治もできません。特に危機の時には本領を発揮するはずです。プライバシーを必要以上に声高に叫ぶのは異常に思えます。既に省庁別には種々の個人情報が収集されています。携帯などは個人情報の塊のような装置ですが、ダン・ブラウンでなくても、キャリア会社に情報が吸い取られているのは業界人であれば誰でも知っている話です。

サービスの向上のためです。

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