ビッグデータ傾向分析(感染状況)

猛威を振るうオミクロン感染拡大ですが、2月上旬にはピークを迎えるという観測が多くなってきました。以下は、政府見解とは全く関係なく、専門家でもない私個人の見解ですので、その点はご留意頂ければと思いますが、これまでも何度か触れています通り、政府分科会という日本の知を代表する専門家集団の分析手法とは全く異なる方法で、社会経済の分析を福田達夫代議士のイニシアティブで同志を募って試みて参りましたところ、目標としているところにはまだ到達していませんが、ビッグデータ利活用による将来傾向分析の第一歩目ができるようになりました。ここでも2月上旬にピークを迎えるであろうことが示されています。

https://moneyworld.jp/news/05_00069460_news

念のためですが、ビッグデータを利用したデータサイエンティストによる分析であって、疫学などの感染症の専門家によるモデルベースの分析ではありません。従って、合っているとか間違っているということよりも、「動的」に日次で傾向分析をすることで、実社会や政治現場での将来動向をイメージで把握できることに、最大の特徴があります。当該データサイエンティストによると、天気予報のようなもの、とのことです。現時点での専門家による予測は、実データとの乖離分析に終始して、実社会での意思決定に直接役に立っているとまでは言い難い状況が続いています。このことは後程触れたいと思います。

いずれにせよ、この予測は現時点では東京のデータのみを使ったものであって、全国に一般化できるかどうかは全く別の話になりますが、このイメージだけを見ると、過去と同じ公衆衛生学的介入を断行する積極的理由は見当たりません。やってもやらなくても感染状況が改善する可能性が高いからです。ついでに言えば、介入の目的は医療提供体制確保ですが、介入したとしても人流抑制には限界があることが既に知られており、仮に人流抑制できたとしても感染拡大防止への高い効果は見込めません(※)。また感染拡大起点はもはや飲食起因ではなく家庭であったり職場であったりしますので、介入により実行すべき具体的で実効性の見込める政策に乏しい。さらに言えばリモート率も極端に下げられる余裕がありません。つまり、介入の効果は、仮に同じことをするならば、極めて限定的と言わざるを得ない状況になっているのだと思います。従って、結果的に介入は飲食宿泊等対面サービス業等に集中的に悪影響がでるだけになります。もちろん現在、検査陽性率が高いために陽性者を正しく捕捉できていない可能性があり、収束期には感染者数がなだらかに減少する可能性があります。そうなると医療提供体制に負荷が残ることになります。しかし人流で抑制できる問題でもありません。本質的にはこの感染減少期の体制確保のための政策を今実行すべきで、実際に手は打たれています。

このシステムの背景について少し触れたいと思います。コロナが世界を襲った一昨年春から長らく言われているのが、感染拡大防止と経済のバランスです。このブログでも何度か触れました。しかし、感染に関するデータも、経済に関するデータも、山ほどあるにもかかわらず、それをマッシュアップ(複合的に重ねて)して分析して政策を立案するということが、積極的に行われてきてはいないと感じていました。つまり、感染データだけを見て必要最小限の介入を行うことで経済インパクトを最小化するという方針であったように見えます。そして傾向分析(予測)の不足。様々な学者が予測を立てるのですが、意思決定者として確信をもってそのデータでもって国民とコミュニケーションを図れる、というレベルではなかったように思います。傾向分析は先手先手の政策には欠かせないインテリジェンス機能です。

予測については当然かもしれません。私も以前は研究者の端くれ。理論シミュレーションは複雑なモデルであれば当たらない。人間の行動を含む社会全体のモデルですから当たり前です。正確性を求めること自体が適当ではない。相当な実験を重ねてモデルを修正しないと当たらない。そして当たらない理屈を議論するから時間がかかる。それも確証が得られない。そして多くの専門家がモデルを提示するから、どれがいいのか意思決定者としても判断に迷う。迷うだろうから学術界の代表者が多くのモデルを総合的に俯瞰して意思決定者に伝える。でも丸まった結果なので、政治っぽい発言になる。データとしては出てこない。出てこないので、タイムラグを伴って発現する感染症の影響に対して先手先手の意思決定ができない。これは個人個人の能力とかでは全くなくて仕組みの問題なのだと感じます。そうなのであれば、最初から専門的な論理的正しさよりも、過去の経験から、傾向を見る手法の方が意思決定者として分かりやすいのではないのか。

そういう意識から、民間ビッグデータとデータサイエンティストの力を借りて、徐々に感染に関する傾向分析ができるようになっておりましたのが、冒頭のリンク先データです。繰り返しになりますが、ビッグデータ傾向分析なので疫学的に正しさは求められませんし、経済データもまだです。しかし大体あたるし体感的にも納得できる。こうした分析を長らくしていると気付くのが、傾向分析を見れば無意味な政策でも、政治的には実行せざるを得ない状況、というのがあるということです。先に触れた公衆衛生学的介入の要不要も同じです。例えば感染拡大傾向にあるときに本来やるべきは、必ず迎えるであろう感染停滞期に積極的経済政策を打つことですが、例えばGoToキャンペーンなどは準備に時間がかかる。しかし、かかるからと言って、感染拡大期にGoToの準備を打つなどと発表したら袋叩きに合うでしょう。政治は耐えられない。

もし傾向分析の手法と結果を国民の皆様にお示しし、専門家の意見も併せた上で感染防止対策や経済対策の中身と背景や意味も解説できたとしたら、政府が抱える制約や前提条件と立ちはだかる状況を国民の皆様に共有いただけるのではないか。もう少し言えば、こうしたリアルタイム社会分析システムは、感染症だけではなく経済安全保障や金融危機などでも、ある種役に立つのではないか。社会構造や社会課題が複雑化する中で、政治という民主的手法だけでは解決手段を提供できそうもないときは、日本の英知の結集である科学コミュニティーの存在が無くてはならない存在となりますが、そうした民主的手法と科学的手法の両者が互いの立ち位置と目的を常に確認しあいながら、新たな解決手段を提供するためにビッグデータを使う、ビッグデータをアジャイルにデザインする、という概念を持つことが極めて重要なのではないかと思っています。そもそもビッグデータの結果を意思決定に利活用すること自体、民主的手法と科学的手法の結節点であるとも言えます。実はアメリカではオサマビンラディンを発見するのにビッグデータ分析の手法を使ったと言われています。そういう思いを持ちながら、このビッグデータ分析手法を温めて行きたいと思っています。

https://moneyworld.jp/news/05_00069460_news

※)都会に限った分析ですが、人流分析をすると、介入しても社会生活を維持するのに必要最低限の人流は必ず残り、一方で感染停滞期ではコロナ前に比べた人流はそもそも少なくなっているという指摘があります。すなわち、介入しても人流は第1波で経験した7割減というようなことには到底ならないということです。