防衛大綱は、10年毎を目処に策定される日本の基本的中長期的防衛政策で、アメリカのNDR(National Defense Strategy)という文章に相当する非常に重要なものです。17年の改定から5年しか経っていないものの、国際情勢の変化に伴って昨年策定を予定していましたが、政権交代やら普天間事件で、先延ばしになっていました。
大きく変った点があります。それは「基盤的防衛力」から「動的防衛力」へのシフトを果たしたことです。大きく評価できます。基盤的防衛力というのは、まさに冷戦対応型で、全国各地に均等に防衛力を整備しておこうというもので、10年前くらいから議論がありました。冷戦が終わったのですからあたりまえです。そのかわりに、動的、つまり不測の事態に機動的に弾力的に対応できる即時展開能力のある防衛力となっています。この背景には、尖閣問題や北朝鮮による威嚇問題があります。
残念な点は、武器輸出三原則の問題です。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この課題が大綱に盛り込まれる寸前まで行っておりましたが、最後になって社民協調のために断念したことです。
国際的な共同開発体制が組まれようとしているなかで、武器輸出三原則のためにこの一翼を担えないとすれば、第一に、体制不参加による安全保障上の不利益(共同開発国同志の関係強化)、第二に、海外からの調達コストの問題(参加していなければ高くつく)、などの問題が生じます。
なによりも残念なのが、現政権でも自民政権でも、国際情勢に鑑みて、現実路線としては三原則の一部を緩和すべきだという声が増してきているなかで、政策ではなく政局を優先(社民党を抱きかかえて来年の国会を乗り切るために)させたことです。