マイナンバーカード

マイナンバーカード(MNC)を巡るトラブルが全国で相次ぎ報告されていますが、批判の方向に疑問を感じるものがあり、それは誤解や認識不足によるものもあり、結局それが世間に喧伝されて不安だけが残るという、日本のお家芸に陥るのもよろしくないと思っています。そこで、マイナンバーカードのトラブルを私なりに解説し、正しい批判の方向になる一助となればと思い、ここで取り上げることにしました。

■一連の問題の現象を整理すると以下の通り。(括弧は5月末NHK報道から)
A)マイナ健康保険につき他人のデータが登録された。(約7,300件)
B)コンビニで公的証明書発行したら他人の書類が出てきた。(27件)
C)公金受取口座に他人の口座が登録された。(11件)
※その他のケースもありますが、現象は概ねこの3パターン。
※令和5年7月2日現在で8,787万枚取得のうち約0.008%に相当。

■原因を整理すると以下の通り。
1)データ入力
 ・医療機関や保険団体等の窓口での本人確認方法の誤り(A)(※)。
 ・認識不足による申請者本人の誤入力(子のに親の公金口座を登録等)(C)。
2)システム不具合
 ・システムベンダーのシステム不具合(B)。
 ・誤入力防止の措置が不十分(A,C)。

■認識(データ入力)
・窓口でルールに基づかない方法で誤登録されたのは遺憾。(※)
・ルールの徹底は必要。一方で、誤登録は防げない。
・作業現場では再チェックもしていなかった。
・政府も再チェックを現場に要求していなかった。
・誤登録も問題だが誤登録のリスク管理も問題。

・一方で、MNC導入による窓口負担の批判がある。
・そもそも既存方法でも本人確認ミスやなりすましが多発。
・これらは巡り巡って国民負担になっている。
・MNC導入はミスやなりすましを防ぐため。
・MNC導入で窓口機関の負担軽減にもなる。
・既存方法でのミスやなりすましに関する報道は皆無。
・報道されたら問題で、されなければ問題にならないのは問題。

・MNC制度の信頼性が揺らいでいるが、制度自体の問題ではない。
・返納ケースを見受けるが全く関係ないし逆効果。
・デジタル移行が完了すれば手作業問題は収束。

・紐づけ作業の指針徹底と再発防止に全力を尽くす必要。
・利用者が自ら紐づけ結果を一度チェックすることが望ましい。
・マイナ保険証に関するお問合せは0120-95-0178

(※)窓口で、マイナンバーという番号(カード取得の有無に関わらず全国民に附番)が分からない場合、氏名・生年月日・性別・住所が一致することをもって本人確認することになっていますが、名前だけなど一部の一致のみで登録した医療機関や保険団体がありました。この感覚を私は疑います。

例えば名前だけだと、全国民の中には同姓同名が絶対にいるはずで、名前だけから本人を特定するのは不可能であるのは明らかにもかかわらず、そして国が繰り返しマイナンバーが分からない場合は、氏名・生年月日・性別・住所を確認するよう通知しているにもかかわらず(されてなくても分かるだろうと思うのですが)、医療機関や保険団体の窓口担当の中に国の方針を無視して例えば名前だけから登録したということでした。

■認識(システム不具合)
・ベンダーによる不具合発生は遺憾。いわゆるバグと推測。
・マイナンバー制度に固有の問題とは言えない。(システム開発に付き物)
・システムベンダーにおいて、早急な障害復旧と再発防止が必要。
・発注者の行政側も発注仕様見直し等を通じた再発防止策が必要。
・本質は、データ入力に掲げたものと同様、リスク管理。

■概括
一言でいえば急ぎすぎたのだ、という意見が太宗を占めていますが、私はミスを前提としたリスク管理の問題だと認識しています。実は手作業もありながら、99.992%で正しく登録されているということは、驚くほど移行作業の精度が高いとも言えます。しかし間違われた人はたまったものではないので、絶対にあってはならないのは確かです。徹底究明と再発防止は論を待ちません。一方で、移行を乗り切れば本人確認の精度が現在より遥かに高くなることは共有すべきで、移行期のミスだけを鬼の首を取ったかのように指摘し、制度移行自体を否定するべきではないはずです。

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