メディアからの質問に対する回答

選挙が近づくと、山のようにメディアから質問状が送られてきます。メディアは政治を監視し国民が適正に候補を選択できるようにする役割がありますので、可能な範囲で丁寧な回答を心掛けているのですが、残念ながら大抵は、〇×式の二択です。単純化したほうが分かりやすいのは理解しますが、二択では間違いなく等身大に伝わらないと思います。

そもそも民主主義というのは二値化できないものです。民主主義は確かに最終的には多数決で決せられますが、多数決とは本質的に違うものです。民主主義とは多数派が多数派になったとしても少数派の意見を受け止めて配慮し慮るべきものだからです。かいつまんでご紹介したいと思います。

「外国人労働者の受け入れについて、あなたの考えに近いのはどれですか。1.より積極的に受け入れるべきだ。2.より抑制的に行うべきだ。」について。私は、まずは産業政策と転嫁対策で安定成長を目指した上で、一定の管理下で限定業種への受け入れを拡大することには賛成ですが、無尽蔵に受け入れることには慎重です。これは賛成とすべきなのか反対すべきなのか。1の「より積極的」というと無尽蔵に受け入れを推進しているように感じます。2の「より抑制的」というと、受け入れに消極的で事業継続の円滑化を無視しているように感じます。合理的な答えを出すべきです。

「国立大学の学費を値上げすることに賛成ですか、反対ですか。」という設問について。当たり前ですが、まずは物価高による政府税収増の一部を利活用し政府から大学への運営費交付金を物価高に見合うだけ増額すべきで、それでも不足する部分が生じるのであれば物価上昇に見合う値上げは容認せざるを得ません。ちなみに当然ですが、ゆるやかな物価上昇局面で給与も含めて全てが安定して上昇することを、一般的には経済成長と言います。即ち国立大学の学費上昇が問題なのではなく、実質賃金が上がらないことが問題で、その答えは価格転嫁構造の実現にあるはずです。出口の価格上昇を叩く風潮は転嫁促進に逆行しデフレマインド助長となります。溢れる水があるならば、容器のかさ上げではなく、元栓を締めないと水漏れは直りません。

「6月に成立した改正政治資金規正法は、議員への罰則強化や政治資金の透明化策などを盛り込んだ一方、政策活動費について10年後に領収書を公開する方法や、支出をチェックする第三者機関の設置などの制度設計が「検討事項」となっています。この改正法が、政治とカネの問題の再発防止にどの程度効果があると考えますか。」について。改正法は3割が再発防止、7割が透明化ですが、その透明化の部分は、再発防止とは何の関係もありません。政策活動費の領収書公開は再発防止とは関係なく、政治全体の透明性向上の話です。なので透明化しても再発防止には理屈的に繋がりません。車に新型ヘッドライトを付けましたが、早く走ると思いますか、と尋ねられている感じがします。

「大企業や所得が多い人への課税を強化し、国の財源にあてることに賛成ですか。反対ですか。」について。質問が、大企業や高所得者のみを対象とした課税強化の質問ですが、今は物価上昇局面で税収は拡大していますし、どの層を対象としようが、課税強化は確実に経済を悪化させ、税収を減じる可能性さえあります。税を財政面でしか見ていない単視眼的質問に見えます。金融所得課税のことを指しているのかもしれませんが、そうだとしたら余計に的外れに感じます。

「少子高齢化が進む中での社会保険料の負担のあり方について、あなたの考えに最も近いものはどれですか。」について、選択肢が、高齢者負担増、現役世代負担増、高所得者負担増、給付抑制、その他、回答しない、の6択。そもそも給付減か負担増かという二択しか考えていないのが残念です。既に広報していますが、私は予防医療へのシフトやデジタル化、あるいは終末期医療の在り方検討によって、社会全体の社会保障の在り方は変えられると考えており、そうした第三の道を模索する考えです。

「女性が天皇になるのを認めることに賛成ですか。反対ですか。」について。初当選以来毎回聞かれる質問ですが、女性天皇に積極賛成する人がどの程度いらっしゃるのか分かりませんが、皇室の伝統を考えれば、そもそも積極賛成には決してなれない問題でもあって、それを「賛成」とか「反対」いう回答しか設けない言葉的センスの問題を感じました。その上で、女系天皇はあくまで反対ですが、女性天皇については、状況によっては消極的に容認せざるを得ない判断もあり得るとの立場です。もちろん旧皇族の扱いを含めてそうならないための方策はあると考えています。

「夫婦が希望すれば結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」の導入に賛成ですか。反対ですか。」について。これも毎回聞かれる質問ですが、同姓制度によって具体的にお困りの方がいらっしゃることは事実であって、この問題の本質は、当事者の問題を解消することです。最も避けるべきは世論の決定的分断を拡大させることです。賛成者は本質的な氏制度改正を求めますが、反対者は親の選択権を子供に押し付けるほか別姓を推奨するかのごとき社会になりかねないとの懸念をお持ちです。まだ世論の分断は埋まっていませんので、まずは法改正も含めて通称使用の更なる拡大を積極的に進め、その上で世論の支持を得て本質的な制度改正の検討となるべきです。

「選挙で政党の女性候補者の割合を一定以上にするよう法律で定めることについて、あなたは賛成ですか、反対ですか」について。最初から法律で義務化すべきかどうかは極めて疑問です。まずは目標の設定と結果の公表を行うとともに、比例名簿登載時に党の意思として女性割合を高める努力を行うことが重要と考えます。自民党は既に10年後までに3割に増やすよう目標を定めており、具体的な行動計画に移す段階です。何でもいきなり法律で縛ればいいという話ではないと考えています。

「同性婚を法律で明記することについて、あなたは賛成ですか、反対ですか」について。多様性が重んじられるのは当然として、同姓婚の制度がないがゆえにお困りの方々もいらっしゃるのも事実だと思います。可能かどうかは検討していませんが、私は救済制度の一環として司法において個別に判断頂くような制度ができないものかと考えています。いずれにせよ、何人も同性婚ができる、とするような世論を決定的に分断するような法律は、最初のステップとしては決定的に間違っていると思っています。

「少子化対策について、あなたの考え方はどっちらに近いですか」(A:税金や社会保険料の負担が増えても、進めるべきだ、B:負担が増えるなら進める必要はない)について。現状の財源でリバランスが必要と考えています。即ち、そもそも基本的に負担増は将来不安を増加させる方向にありますので全く逆行するので反対。また現状の子ども子育て新制度は少子化のためにできることは何でもするコンセプトですが、少子化との相関が高い分野に絞って重点的に給付をすべきではないかと思っています。一方で負担については全世代で支えるコンセプトは賛成ですが、子育て世代や現役世代の負担を減らすようリバランスが必要との認識です。

「あなたは、労働者の解雇に関する規制を緩和することに、賛成ですか、反対ですか」について。私は労働市場の流動性を抜本的に高める必要があると考えています。一方で、労働規制は基本的には緩和していくべきものと考えています。しかし、規制緩和は労働市場の状況に合わせて徐々に変えていくべきものと考えています。従って、性急な解雇規制緩和は現時点では必要ないとの考えです。労働市場の流動性向上については、マッチングやリスキリングなど様々な取組がなされています。

「アメリカ軍の核兵器を国内に配備して、共同運用する仕組みである核シェアリングについて、あなたは賛成ですか、反対ですか」について。核の保有や使用は被爆国であって国際秩序の劣化に繋がりますから論理的にも感情的にも反対ですが、現状の厳しさが劇的に増す安全保障環境を考えた時に、艦船の寄港はありうるのではないかと考えるようになっています。ただ、共同運用には反対です。

●追記

選挙後に、防衛力強化について、NHKには消極的なコメントなのに、その他のメディアには積極的なコメントは何故なのか、との指摘を頂きました。私の考え方は、防衛力の抜本強化は必要、財源は、法人税増税等の既に決定済みの政府方針の方向で早急に措置すべき、それ以上の財源が必要な場合は、基本的には恒久財源である税で措置すべきだが現時点の経済情勢で直ちに措置するべきではない、なのですが、振り返って調べてみましたところ、

NHKの「政府は、5年間で43兆円程度の防衛費を確保する方針で防衛力の抜本的強化を進めています。これについてどう考えますか。」に対して、回答は選択肢にあった「今のままで良い」と回答しています。このことだと思いますが、これは既存の抜本強化の方針で良い、という意味で回答したもので、決して抜本強化に反対するものでは全くありません。続く質問でもそのための増税に反対としたのはその趣旨です。私の日本語理解能力の問題もあったと思いますが、質問するならもう少し分かりやすくして頂きたいということと、選択肢を限定するなら主要な意見も選択できるようにしてほしい、というのが正直な意見です。

その他、日テレや朝日の「日本の防衛力はもっと強化すべきだ」には「賛成」と回答していますし、読売新聞の「政府は防衛費を大幅に増やし、対国内総生産(GDP)比の規模を、現状の1%程度(約5.5兆円)から、2027年度には2%(約11兆円)にするとしています。防衛費の適切な規模についてどう考えますか。」には「政府方針の通りGDP2%程度とすべきだ」と回答。また毎日の「防衛費増額の財源確保に向け増税する政府の方針について、あなたの考えに近いのはどれですか」には「防衛費増の方針に賛成するが、そのための増税はすべきではない」としていますが、防衛だったらなんでも増税に賛成というわけではないので、そういう選択にしています。

斯様に単純な選択肢回答は回答者の思いをなかなか十分に反映してくれないシステムになっていることはご承知おき頂ければと思います。

そういう意味では、実はこうした分かりやすさとキャッチ―さを追求しようとするメディアの態度こそが、考えることをやめ極論に走りがちになる現代の風潮を生み出しているのではないかとさえ思います。実は今回の選挙では、朝日新聞だけが、文章での回答を許してくれました。