米政権の誤報対処

アメリカは今、政治的分断に喘いでいます。SNSを始めとしたメディアによる過激な主張や論稿が原因ではないかとの指摘もされていますが、一方で、政権側は、自らの正当性を主張するため、誤報若しくは偏向と判断した報道があれば、政権自らホームページに公表し、報道官が反論しています。

ホワイトハウスのメディアオフェンダー
ホワイトハウスのメディアオフェンダー

メディアの違反者(Media Offenders)というタイトルのページで、主張、問題点、事実、引用とともに、政権側の視点で誤報や偏向を指摘するという構造になっています。例えば一例としてワシントンポストを挙げると、カリブ海での麻薬テロ撲滅作戦について匿名情報源を基に国防長官が「皆殺しにしろ」と命じたと報道したことに対して、「根拠のない嘘」と断じたり、移民政策に関する記事で左派団体の弁護士を中立的専門家と紹介したことに対して、「政治的偏向を持つ人物であることを隠した」と断じたりなどです。

ワシントンポストの例
ワシントンポストの例

この政権姿勢の是非を論じることは避けますが、日本の議会に籍を置いていると、特に自分が主導している政策であればなおさら、明らかに間違った記事や誘導的な記事を見かけることがあります。大多数が良く取材された良い記事なので、そういうのが紛れ込むのは残念でなりません。おそらく真面目に取材をしてはいるとは思いますが、中心的な人物に取材せずに、誰かの適当な認識に基づく適当なコメントを引用して、それらしい記事を書くという流れなのだと思います。コメントした側も記事になるという認識もないはずですし、意図的なものではないはずなので、それほど反応することは殆どありません。

ましてや政権が積極的に否定をすることは殆どなく、あったとしても消極的に公の場所で真偽を問われた場合の否定です。ただ、明らかに間違った記事を放置すると、認めたということにもなりかねず、積極的に否定したくなるものですが、かといって、いちいち個別の記事に反応できないのも事実ですし、一般論として政権自らが積極的に反応すると、政治的に政権と同じ立場にある国民の皆様からは歓迎され、違う立場にある国民の皆様からはプロパガンダだと批判される傾向にあり、分断を深めてしまう可能性もあります。

もちろん外国主体のためのプロパガンダ対処は別次元なのだと思います。規制することはできませんが、透明化はすべきだと思いますし、積極的に反論もありえるのではないかと思います。戦略コミュニケーションはまさにそうした取り組みなのだと理解しています。(なおSNSについては、最近ではプラットフォーマー自ら、運営主体の政治的バイアスの可能性を表示する取り組みが行われています。)

アメリカには政治的バイアスを評価する民間団体があります。左右それぞれのメディア記事を並列で提示することで、バイアスの評価とともに、異なる政治的視点を可視化して対話を促し、民主主義を強化することが目的の団体のようです。運営は、取締役は左右様々な政治的立場をバランスさせた構成で、寄附やクラファンによって運営されているとのこと。ファクトチェックや教育機関向けのメディアリテラシー教材も提供しています。

https://allsides.com

完全な中立派不可能だが透明性と多様性でバイアスを管理することが目的だとするこうした団体が日本にも増えていけばと願っています。本来この手の課題は政治が直接介入すべきではないはずなので。