特定秘密保護法案が衆議院を通過しました

特定秘密保護法案が昨日、衆議院を通過しました。予算税制など他の重要審議もある中でかなりの時間を審議に費やしたため、これから他の部分に全力を注ごうと思っています。

さて、世論調査ですが、数日前の調査結果は、FNNが6割は法整備が必要、今国会の成立にこだわらずに慎重に審議が必要だという意見が8割。日本経済新聞とテレビ東京の共同調査が、反対が50%、賛成が26%。共同通信が支持が46%、反対が41%とのこと。そもそもこれだけ社によってばらつくのは、理系の私としては統計のとり方(質問のしかた)に問題があるのではないかと思います。

さて、質問に立たせていただいて第一にお訴えしたのは、この法案の最大のポイントは、現実に直視する必要性を訴えている法案だ、ということです。この部分は塩野七生さんの「密約に想う」を是非お読みいただければと想います。日本人は、政府のとある秘密が外部に流出したら1000人死にました、という事態が発生する可能性を肌感覚でなかなか理解できません。ではそれはどんな秘密ですかと言われたら秘密だから言えないでしょうとなる。で、反対者はだからだめだとなる。

イラク人道復興支援活動の際、日本の自衛隊は一切司令部に出入りさせてもらえなかった。当たり前であって、もし司令部に入って情報がリークされ、他国部隊の若者が1人でも死んだら、いったいどう日本は責任がとれるのか。逆に、だからそんな海外派遣はだめだと言うなら、日本が実際に侵攻された場合、どこの海外の若者が日本のために血を流して戦ってくれるのか。そういう肌感覚がまったくない。

あるいは、2005年中国潜水艦の情報を漏洩した事件、初めての防衛秘密の漏洩と言われました。政府は何が秘密なのかを公表していませんが、勝手に想像するに、なぜ火災と分かったのかがポイントではないかと思っています。火災かどうかなど分かるはずがない。それは通信傍受か人的収集か。その手段が中国側に分かってしまったとしたら、中国側はどのような対処をするでしょうか。これは、想像力の勝負なのです。だから秘密は必要なのです。

反対派と呼ばれる人の問題意識は共有しています。第一に、もっとも多いのが、特定秘密の範囲があいまいだ、という問題。これは、国会審議の中でも、死ぬほど繰り返された質問で、私もやりましたが、理屈の上では、現在国家公務員法で縛られている秘密の範囲の方が遥かに広大なのであって、特定秘密はその範囲を超えないのです。今だって隠そうと思えば隠せる。その現在でも秘密の一部を限定して特に秘密にしようというものなのです。今回特定秘密にしようとしているのは、国家公務員法ですでに秘密なのです。だから本法案に反対なら、国家公務員法の秘密にも反対してほしいと思うのです。もしそれを反対するなら情報公開法も自動的に崩壊してしまいます。

第二に、国民の知る権利です。当たり前です。以前にも書きましたが、情報公開が原則で、その権限が強ければ強いほど、秘密も強くなれる。秘密の指定とチェックは5年毎。原則大臣がやる。大臣は政治家です。そして永遠同じ人が大臣でありえない。30年経てば閣議でチェック。その間も国会の秘密会などでチェックできる仕組みになっています。この部分に対する批判で、指定もチェックも政治じゃないかというものがありますが、高度に政治的なものを第三者に判断できるのか私には疑問です。国際社会の現状を正確に認識し、日本のとりえる可能性を正確に把握した上で、苦渋の判断をする必要があるから政治があるのであって、その付託を受けているのが政治ではないかと思うのです。だから有権者は横暴があれば選挙で審判できるという強い強い権限が与えられているという仕組みになっているのだと思っています。ここは、政治というものが何であるのかが理解できるかどうかの境目だと思っていますが、総理は第三者チェック機関を設置するほうが望ましいとおっしゃっているので、今後設置を前提に議論していきたいと思っています。いずれにせよ、この部分も塩野七生さんの「密約に想う」を是非お読みいただければと想います。

第三に、政府が不正な情報や都合の悪い情報を隠蔽してしまうのではないかというものですが、これは第一の指摘で述べましたし、私も質問させていただきましたが、不法不正な情報は対象範囲にならない。しかし、それでも秘密だからでてこないじゃないかという批判があります。不法不正な情報は内部告発できますし、現行法で告発者を保護する法律が既にあります。

いずれにせよ、委員会での法案審議では、他党からなるほどと思う指摘もあり、何度も先輩議員が丁寧に話を聞き、修正に応じることを繰り返しています。質問も、最終段階では同じような質問ばかりになっていました。現場にいるから分かります。長い審議時間だったので、私のような新人にもお鉢が回ってきたものだと思っています。