社会保障と生活保護と生活困窮者と

昨日、我が地元紙に、昨年の香川県の生活保護不正が過去最悪の289件、1億5000万であったことが報じられていました。景気の悪化と雇用情勢の変化で生活保護需給世帯自体が大きく増加してきたので、当然不正も増えてきたものと考えますが、私はこうした行為は絶対に許せない。不正に受給する人がいればいるほど、正規の受給者の受給額が減るのをこの人たちはどう考えているのでしょうか。と憤る前に、不正を排除し適正に運用できる制度にしていかなければなりません。今般、生活保護扶助制度が変わりましたので、この機会に触れておきたいと思います。

まず社会保障全般を概観したいと想います。現在日本は、110兆円の社会保障給付を行っています。内、年金54兆円、医療36兆円、介護9兆円、子育て5兆円、生活保護4兆円、その他です。そして毎年1兆円づつ増えている。一方、国が国民から徴収しているのは、保険料として62兆円(個人と事業者でほぼ折半)、社会保障税として41兆円(内国が30兆、地方が11兆)です。収支ギャップは積立金の運用収入で賄っている構造です。

今、4人に1人が65歳以上ですが、オリンピックムードが落ち着くであろう202 5年には、既に3人に1人が高齢者になります。さらに言えば、労働人口何人で高齢者を支えるかというと、現在は2.5人に1人、2025年には1.8人に1人、実は私が大学のときは5人に1人。超ハイペースで社会構造が変革しています。

ここから多くの課題が想起できます。

1つは人口構成の問題。少子化対策をこれまで以上に推進することです。私はまず、担当大臣が2人以上生もうとアナウンスすることが意外と大切だと思っていますが、それ以外にも、N分N乗の税制(世帯同居人数を増やすような政策誘導)の導入も強く訴えていかなければなりません。そしてそもそも子育て系の支出。社会保障給付全体に比べれば現在は10分の1。これはOECD諸国の中でももっとも低い部類で、先進諸外国は10に対して3〜4。つまり先行投資をしていると言えます。こどもを生み育てるのにやさしい国づくりをしなければ少子化は改善されません。

2つめは雇用問題。高齢者・女性労働力や就労支援やマッチングの問題、テレワークなどの雇用問題に今まで以上に真剣に取り組まなければならないと考えています。なので、当選以来ずっと雇用問題調査会という党内の会議に参加してきました。外国人の労働力も考えるときが来たと思っています。実は計算方法にもよりますが、女性や高齢者や若年者の労働力をフルに活用しても、現在の計算上の経済成長を2020年以降も維持できるかというと微妙な問題があるのです。現在は外国人の単純労働者の受け入れには政府も党内も否定的な意見が多いのですが、ここは理性をもってちゃんと考えておかなければなりません。

3つめは、給付の改善。年金・医療・介護などの改善。年金給付額は今後どうなるのかというと、ベビーブーマーや団塊ジュニアなどがいて人口構成が複雑なので単純に増え続けるわけではなく、制度もずいぶんの改善されてきたので、例えば2025年にはそれほど増えず60兆円、しかし医療は54兆円と1.5倍に、そして介護は20兆円と2.5倍になります(数値はちょっと鉛筆舐めてます)。つまり、喫緊の課題は医療と介護ということになる。ここは来年から少しづつ取り組んで行きたい課題です。

さて前置きが長くなりましたが、冒頭、生活保護の話題に触れましたが、その本題に入りたいと思います。生活保護給付は現在正確に言えば3.7兆円程度ですが、それを670億円削減することになりました。例えば都市部在住の40代夫婦に子供2人で28万程度だったのが26万に、都市部在住40代単身で12万が11万に、などです。5〜10%減額世帯が全体の25%、0〜5%減額が70%、0〜2%減額が3%です。大幅な削減ではないですが、それでも670億削減できるのは大きい。単純に給付全体が多いということでもありますが・・・。

そして、それよりも大きな問題は、一度生活保護対象になると、そこからなかなか抜け出せないという問題。なので、就労支援を行い、その状態から脱却するための給付金を創設することになりました。そして、不正不適切受給対策として、福祉事務所の権限を拡大してより詳細な調査を可能としたり、現場にあまりにも過大な負担をかけていた指定や取り消しに係る条件をより明確化するようになります。

さらに、生活保護にいたる前の段階で食い止めるための制度、生活困窮者支援プログラムが創設されます。

つまり、普通の人が解雇などにより生活が困窮した場合、まずは通常の既存の求職者支援制度を使ってもらいますが、その時点で生活保護者になりそうな場合の手当てです。まず、各自治体に自立相談支援窓口をつくってもらい、ワンストップサービスの提供が行えるようにする。で、一般就労が困難な場合には、就労準備支援を行う。これは半年から1年程度の支援になります。それでも困難な場合は、就労訓練事業を使ってもらう。これはまさに手取り足取りですが、例えばNPOやら社会福祉法人が主体となって、軽易な作業をやってもらうなどです。

とにかく一度生活保護に入るとなかなか抜け出せないという状態を作らないようにするのが趣旨ですが、思想的に言えば、塩野七生さんがおっしゃっていたように、給付には自尊心が大切だ、ということに尽きると思います。