パックスアメリカーナ3

安全保障環境は厳しさをましております。2008年に初めて中国の公船が日本の領海に侵入し、2010年には漁船衝突事件、その後の世論によって日本は尖閣の国有化を2012年に発表しますが、ここから急激に日中関係は悪化。2013年には中 国は一方的にADIZの設定を発表。昨年はのべ188隻の中国籍船舶が日本領海に侵入 しています。

しかし、日本にとってもっとも重要なことは、中国との関係をどのように改善していくのか、であって、如何に対峙していくかではないということです。もちろん国際社会への挑戦であるとか、普遍的価値への挑戦であるとか、国際ルールへの挑戦に対しては、毅然とした態度を示すことが国家としては大切です。

昨年末、日本は国家安全保障会議、通称NSCを発足させました。私も国家安全保障委員会の委員として議論に加わらせていただきましたが、これで日本の外交安保を含む総合的な国家安全保障の戦略的議論ができる環境が整いました。

さらにそのNSCの下で国家安全保障戦略を策定し、今後の大方針となる、積極的平和主義が発表されました。今までの日本の外交は基本的には消極的、というか反応的というか、受動的というか、とにかく何かが起こって初めて何かをする式のものでした。

日本の外交は戦略なきが戦略という冗談も飛び交っていた時代がありましたが、いずれにせよ戦略的に国際的な法の秩序・安定と平和・自由と民主主義という普遍的価値を維持し強化していくことに日本はこれまでそれほど貢献できていなかったのが事実で、アメリカの安保の傘の元、我が国経済だけに注力してきたし、それが国際的にもそれが是でありました。

つまり、積極的というのは普通以上に積極的なのではなく、消極的であったものを普通にするぞという文脈でとらえたほうが正しいと思いますし、想像力を豊かにして次の一手、次の一手をしっかりと打てる体制を構築するというという理解が正しいのだと思います。

そしてその戦略のもと、防衛大綱が改定され、新しい統合機動防衛力構想が発表され、中期防衛力整備計画では必要な防衛装備品の調達計画が発表されています。

繰り返しますが、中国との対峙という文脈ではなく、普遍的価値に基づいた国際貢献をしていくんだ、しかし、それでも挑戦をしてくるものがいるときには備えていくんだ、というのが我々の想いです。

そして現在では、長年議論のあった集団的自衛権について一部限定されたケースでの行使を可能とするよう議論が行われています。

現時点では、パックスアメリカーナは維持しなければなりません。未来永劫ではありません。歴史を振り返れば明らかであり、例えば古代ローマなど、私は塩野七生史観しか知りませんが、典型例です。しかし、日本が現在舵を切っている集団的自衛権に関する方向は、決して同盟強化のためにアメリカを助けるためにはどこでも出ていく文脈ではありません。あくまでも、せめて自分を助けてくれるときくらいは相手を助けようという文脈でしかありません。

過去にも書きましたが、ただでさえ内向き志向になりつつあるアメリカが、日本の安全と平和を、自国米国の若者を犠牲にしてまで守ってくれるわけがありません。そして、中国はアメリカにとって、経済面、ひいては安保面でも、非常に大切なパートナーであることを、日本は絶対に見失ってはいけません。

日米関係を考える際には、米中関係を考えなければなりません。