選挙区割りと人口減少

1票の格差をどのように考えるべきなのでしょうか。私は最終的には国民投票で判断すべきだと考えます。司法が格差を違憲だとし立法機関の在り方を正すのは正しい。そして立法機関がその是正を議論することはそれ以上に正しい。

しかし、人口減少という構造的問題を抱える日本にあって、人口流入が著しい都会の議員を増やして、人口流出が著しい地方のことを考える議員の数を減らすことになる区割り変更は、それを国民が望むのであれば別ですが、正しい結論だとは思いません。決して地方出身議員の保身の話ではありませんし、議員定数自体を見直せという議論は当然としてもここの文脈とは異なる問題です。

地方の声が届きにくい議会になれば、東京への人口移動は益々加速します。増田寛也先生は、人口減少の対応として、大きく2つのことを言っていますが、1つは少子化対策、そしてもう1つは東京への人口流入の阻止です。これをやらないと、人口は100年で3000万人になります。今の1/4です。

つまり、私が申し上げたいのは、区割り変更して人口動態が劣化して、人口が維持できない国家となった場合、いったい誰が責任をとるのだろうか、ということなのです。それは司法でもないし、マスコミでもない。基本的には立法機関が責任を負うべき話なのです。そして、極論すれば、司法は人口が減っても一人一人の一票の価値を大事にすべし、と結論付けている。その結論は極めて重いものだけれども、国家の在り方が正しいのかとは別の次元だと考えられます。

人口減少がこれほど騒がれた現時点で、果たして司法は全く同じ判断を下すのか、見てみたいものですが(裁判官だって人間ですから)、いずれにせよ、立法府は将来の結果にも責任を負うので、1票の価値か、国家の存続か、に結論を出さなければならない。しかし困難なのは、このことが、司法に従うか反目するか、に直結していることです。通常の政策は、立法機関が決断を下して選挙で責任をとるわけですが、この問題は、国家の存続に傾き過ぎると、司法の判断を立法機関が否定することにもなりかねない。

であれば、こうした問題は、国民が自ら責任をもって判断するしかない問題だと思うのです。

従って、立法機関は、司法の判断に従って、専門家や有識者の意見を聞きながら区割り変更案を国民に提示し、それが是か非かを国民投票にかける、が正しい結論になるのではないかと思うのです。

先日、伊吹文明議長が専門家・有識者で構成される諮問機関の選挙制度調査会の委員を発表しました。区割り案が出てきて議会で議論されたときには、是非このことを主張してみたいと思っています。

皆様はどう思われますか。

ちなみに、本来、一票の格差是正に時間を頂けるのであれば、極論すればですが、区割りで格差を是正するのではなくて、人口移動で格差を是正するという方法で解決したいですよね。と言ってもすぐには困難ですが・・・。本当に日本という国家の在り方を考えなければならないと思っています。