年始早々、日本中、そして世界中をも震撼させるニュースが世界中を駆け巡りました。
昨日20日、ISILによって、拘束されていた日本人2名の人命を盾にとった脅迫動画が公開されました。日本に対する脅迫であると同時に国際社会に対する脅迫でもあります。
ここでは、今回何をすべきか、そしてその延長線上で今後国際テロに日本人が巻き込まれた場合に何をすべきか、外交戦略としてこうした国際テロ組織にどう対峙すべきかについて触れたいと思います。
まず今回何をすべきかについて。
第一に、これはテロであり、暴力による強制はいかなる事情があるとしても、国際社会から断固として非難されるべきであり、私自身も強い憤りを感じています。
第二に、人命を最重要視して判断しなければなりません。
第三に、しかし、安易に要求に応じることは、間違いなくテロを助長します。ですから、テロによる脅迫に屈することは絶対にできません。
そして今回も含め、今後の方針について。
第四に、戦略として最も重要なのは、イスラムとISILの分離です(後述しますがISILは単なる国際テロ組織。この行動はイスラムの敬虔な教義とは無関係)。ISILに対峙するに、イスラム教の諸国を始め国際社会と密接に連携協力しながら、事態収拾に努力すべきです。そして、あらゆるルートを通じてISILとの接触を図ることに尽きます。現在ヨルダンで中山泰秀外務副大臣が対応の陣頭指揮にあたっています。
第五に、最も重要なのは月並みですが情報です。情報の収集、管理、発信。2年前までどれ一つ真っ当に整っていなかった。やろうとすると、やれ右翼だ滅茶だと反対のオンパレード。しかし、生身の国民を守っていくためには絶対に必要な処置です。そして忘れてはならないのが、目的は平和であって紛争を絶対に回避すること。守るのは組織や法律ではない。守るべきは生身の血が通った人間なのです。
第六に、中東の国際テロ組織に対峙するに間違ってもやってはいけないのは軍事部門への直接関与です。日本は独自の外交方針で米国とも欧州とも違う路線を歩んできました。だからアラブ諸国からも多少は信頼がある。今回、安倍総理は2億ドルの資金協力をアラブの周辺国に行うことを発表しましたが、これは人道支援の非軍事部門に限定されたもので、実に正しい。ごちゃごちゃ言われる筋は無い。基本的に我々はこのまま人道支援最優先で突き進むべきです。
第七に、こうした国際テロ組織に対峙するに国際社会はどういう方針であるべきなのか。以前、シリアで発生したアサド大統領による化学兵器問題の時のアメリカ外交方針について、この場で述べたときも同じですが、こうしたテロ組織に対峙するに、もっと国際社会は強くでなければなりません。理由は人道的観点です。
https://keitaro-ohno.com/?p=1834
アメリカのオバマ大統領は早速今日、ISIL打倒を一般教書演説で表明しました。空爆と同時に地上軍の投入のことかと思ったらそうではないらしい。いずれにせよ、空爆は続行されるはずです。なお、軍事作戦に参加している国は把握しているところでは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、トルコ、イタリア、ポーランド、デンマーク、イラン、サウジアラビア、UAE、ヨルダン、バーレーン、カタール、オランダ、ベルギーなどです。それぞれ支援の仕方は違います。戦闘機を出す国、シリア空爆は反対だけどイラク空爆はやる国。トルコは、国境でクルド人問題を抱えていますので難しい選択だったと思います。人道作戦を含めるともっと広がります。ハンガリー、ギリシャ、クウェイト、北欧、韓国、日本など、全部で42か国以上とされています。中国とロシアは空爆を批判しています。
次に少し苦言。
第八に、米国を中心に、ISILに対する空爆などの軍事作戦が展開されていますが、日本は、新しい自衛権発動三要件を適用すると(つまりそれに沿った新安保法制ができると)、自衛権発動としての自衛隊の参加の可能性はあるなどと、軽々に一部新聞社はしきりに喧伝して国民の恐怖心を煽っていますが、ありえません。発動要件を満たしません。新発動要件を良く読んで頂きたいと思います。絶対にありません。邦人輸送のための自衛隊派遣ならあります。これは現時点での法整備でも可能です。
第九に、少し付け足しですが、安倍総理が周辺国支援を表明したから拘束されたわけではなく、既に拘束されていました。因果分析を正確にしなければなりません。
ついでに、ISILのことについて、少し書き足しておきたいと思います。
まず、念のためですが、ISILは国家ではありません。もともとのルーツで言えばヨルダンあたりの過激派組織だと言われていますが、単純化すればアルカイダ系の国際テロ組織の分派で、本拠地はシリア。現在イラクとシリアをまたぐ地域で活動する、歴史上もっとも残忍で人権蹂躙甚だしい組織です。ここ数年で暴虐性は増し、勢力範囲は拡大。特に昨年、反アサド政権組織からの支援を受けて急速に勢力を拡大し、シリアだけでなくイラクの主要都市を次々に攻略しています。
先にも述べましたがイスラムの崇高な教義とは全く関係ない。主張は同派によるイスラム圏内の新秩序形成。つまり支配。そして拉致脅迫ビジネス。ですから、アラブの国も含めて国家承認をしている国はありません。シリアのアサド大統領も当然アンチです。そういう意味では、そしてアラブ連盟はアメリカを中心とするISIL包囲網に参加しています。そもそもアルカイダ自身もISILを非難していると聞きます。一方支持するグループはありますが、同じく国際テロ組織です。例えば昨年有名になった、人身売買組織のアフリカ・ナイジェリアのボコ・ハラムなどです。
シリアのワリフ・ハラビ臨時代理大使と