シェアリング・エコノミーの可能性

シェアリング・エコノミーと言うと、なんのこっちゃ、と思う人もいるかもしれませんが、海外では信じがたい勢いで急成長している領域です。そして実は地方創生とも関係する概念です。

名前の通りですが、みんなでシェアー(共有)する、ということに尽きます。例えば、家でも車でも、これまでは所有することが中心でしたが、共有することもしっかりと考えていかなければならない。つまり、ストックとフローの隙間を利用したサービス産業ということです。実は農業分野で導入されている農地バンクも貸し借りのマッチングですのである種この概念の中に入ると思います。
 
そしてなぜ地方創生に関係するかというと、新しいストックをつくり続けるよりも、ストックの有効活用を考えた方が、地方はより好循環を生む可能性がある。例えば空き家があって、そこを少しでも貸し出す努力をする、とか、過疎地域で既存サービスも存在しない地域であれば、低額のサービスを提供できる、などです。

問題3つ。 

既存のサービスを提供する業種と競合し既存産業が衰退しないかという視点。それは困ります。共存できる範囲を模索する必要があります。1+1=1になっては困るわけで、1+1=3にしなければなりません。マッチングビジネスが栄えるとビジネスチャンスは増えるわけで、既存産業も得するという明確な計画が必要です。実際に米国では既存業種形態の売り上げも伸びているという話も聞きます。既存業種が納得するものでなければなりません。

もう一つはストック関係産業がサービス産業の中に組み込まれることになる。つまりストックというモノ作り産業が衰退しないかという問題。しかし、よく考える必要があります。例えば携帯電話は携帯電話というモノ、それを利用して通話するというサービスがあります。昔は携帯電話というハードで儲けていたものが、携帯電話そのものがほとんど無料になって、サービスで儲けるというビジネスモデルが20年くらい前から主流になっている。コピーという事務機器も本体価格は極端に安くなってコピーというサービスで儲けるモデルが主流。しかし、ごくごく最近では更に発展していて、サービスや周辺技術を完全オープン化し、ハードのコア技術を徹底的に知的財産によってクローズにして、このコア技術で儲けるというビジネスモデルが興隆しつつあります。皆にただで使わせて普及させ、それが無ければ困る社会を作った後、ハードで儲けるということ。アップルのiPhoneは実はサービスで儲けているわけではなく、ハードで儲けています。シェアリングという、ストックをフローに繋ぐ概念を、練りに練ったオープンクローズ戦略でビジネス化すれば、ストック産業はより発展する。IoTやCPSやビッグデータという新テクノロジーによる社会大変革の時代、世界が仕掛ける戦略に飲み込まれてはなりません。

もう一つは、見ず知らずの人と共有するわけですから、トラブルが発生しないか、という視点。誰でもいいということは絶対あってはならないので公的個人認証などを有効に使うことがまず考えられますが、いずれにせよ必要なルールは導入しなければなりません。ただ重要な視点は、トラブル回避するインセンティブを導入強化しトラブル処理のルール作りにエネルギーを割く方が健全だと思っています。まずはマッチングビジネスのルール作りから始めるべきです。

以上からすれば、既存の規制を撤廃することよりも、まずはプラットフォーム事業者のプラットフォームを作ることが先決だと思います。

ただ、政治は30年後くらいを見据えて社会のありかたを考える必要があります。国家、であるならば、どこでも産業を育成し消費者を保護するための規制というものがありますが、日本の場合、できることをやたらめったら細かく書いてある。だからその中で生きる既存産業はその中である限りは温室で生きていける。反面、IoTやビッグデータなど新しいテクノロジーが出現して新しいビジネスを展開しようと思ったら、必ず規制に引っかかる。一方で、ニュービジネスが発達しやすいアメリカはどうなっているかというと、規制こそありますが、細かくないか、むしろやったらダメなことが書いてある。だから、やろうと思えばなんとかビジネスを興せるわけですが、トラブったら訴訟するというコストが発生する。つまり、平たく言えば、明確な産業戦略を国家が把握している場合は、前者の方が産業活性化しやすいわけで、一方で民間の活力とか多様性を頼りにするならば、後者の方が活性化しやすい。牧歌的にアメリカンスタイルを導入することを排し、日本らしい社会の在り方、規制の在り方を、しっかりとした国家観をもって、じっくりと議論していかなければ、日本は世界の戦略に飲み込まれてしまいます。

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