高速増殖炉もんじゅ

夢の発電とまで言われた高速増殖炉もんじゅが岐路に立たされています。暫く前からその研究開発推進の是非を巡り議論がありましたが、先般、原子力規制委員会から、運用体制見直しと廃止まで視野に入れたと思われる勧告が文部科学省に出されました。

以下、誤解を恐れずにわかりやすく単純に記述することにします。良い事と悪い事とを。

高速増殖炉もんじゅを簡単に説明すると、普通の原発(軽水炉)で出た核燃料のゴミ(放射性物質)を再処理して別の核施設(もんじゅ)で核分裂反応させると、ゴミはきれいになるし(高速炉)、やりようによっては入れた燃料以上の燃料が出来上がる(増殖炉)という、夢のような施設(ゴミと書きましたが資源になるということです)。しかも、普通の原発は水で冷却するから、漏れて蒸発してなくなればメルトダウンという恐ろしいことが起きますが、ナトリウムを冷却材にしているので、漏えいしても蒸発することもなく、危険性は軽水炉に比べて小さいというもの。

通常運転できるようになれば、研究者の人的知的ハブ化が進み、日本が研究の拠点になりうると言うメリットもあります。実際に昨年の政府の発出したエネルギー基本計画でも、「廃棄物の減容、有害度の低減、核不拡散関連技術の向上のための国際的な研究拠点と位置づける」としています。

海外の情勢は、アメリカは昔やろうとして断念、フランスは現在も増殖しない高速炉(ごみ処理施設)として推進、中国なども積極的姿勢をとっています。

で、問題点ですが、まずそもそもなんでずっと止まっているかというと、20年前に運用を開始した際に冷却ナトリウムの漏えいが見つかったり、点検に不備があったりと、なんだかんだでずっと止まっています。つまり運用がうまく行ってない。

原子力規制委員会が今回勧告をだしのは、これが直接的な原因です。運営主である原子力機構がちゃんと点検をやらないから。

更に問題なのが、金食い虫であること。建設に6000億円、累積運転費4000億円と、これまで既に1兆円使っている。で、止まってても年間運営費200億円(動けば売電収入が少し入ってきますが)。何に使ってるかというと、安全基準や点検など。

以上書いた上で整理すれば。

・成功すれば普通の原発の核燃料ゴミを処理してくれる。
・成功すれば核燃料調達の心配がなくなる(増殖すれば)。
・核廃棄物処理や核不拡散の国際的研究開発拠点になりうる。
・累積1兆円投資して、これからも年200億円かかる。
・更に実用化するまでには途方もない期間がかかる。

ということになり、その上で課題は、

・上記は本当に合理的論理的戦略的に正しい理解なのか。

という視点とともに、原子力規制委員会の指摘について、

・原子力機構の運用体制は真っ当なのか。

ということと、そもそも、

・原子力規制委員会の運用体制は真っ当なのか(指摘自体正しいのか)。

という視点も必要だと思います。規制委員会については必要以上の高コストを強いている可能性はないのか、ガバナンスはどのようなものなのか、という視点もあります。また、原子力機構の運用体制については、そもそも過去20年間ずっと停止していて、その間、問題点ばかりを指摘されてきた機関の関係者の士気は保たれたままなのか、という視点とともに、もんじゅは運用計画の時間スケールが極めて長い研究開発プロジェクトですが、果たして通常の運用マネージメントで問題ないのか、これだけの長期プロジェクトに関与する関係者の士気が保たれるのか、というところも関心事項です。

いずれにせよ、以上のポイントを押さえたうえで検討を行っていきたいと思います。