米国出張報告

5月1日から5月3日に亘り、マンスフィールド財団日米議員交流プログラムに参加して参りました。議員交流プログラムではありますが、国務省、国防省、USTR、シンクタンク、議会スタッフなどの意見交換の場もあり、現場ならではのアメリカ政府及び議会の雰囲気を十分に吸い込んでまいりました。

議論は、北朝鮮情勢が6割、TPPはじめ貿易関係が3割、残りがその他、と言ったところで、これだけ限られたトピックスに絞られた3日間を過ごしたのは私にとっては初めてといっても過言ではありませんでした。それだけ米側の肌感覚が北朝鮮に大きくシフトしているということです。さらには米国は日米韓同盟の重要性を強く意識していると感じました。

政府・議会・シンクタンク研究者などの意見を総合すると、意見はだいたい以下のようなものです。北朝鮮は望んで非核化を行うことはまずありえず、過去に米国が行ってきた対北朝鮮政策は結果的に失敗に終わっているので、方針転換をすべきである。北朝鮮とは兵器管理や軍縮についての対話が必要という意見もあるが、圧力を強める前に交渉などに入るべきではない。圧力は特に中国にもっと役割を担ってもらわねばない。北朝鮮の人権問題を中心に多国間の枠組みで北朝鮮に圧力を加えることも重要な視点だ。ただし先制攻撃は現実的ではない。いずれにせよミサイル・衛星・核実験などは止めさせなければならない。そのためには米日韓関係は非常に重要である。

実は私が一番気になっていたのが、カール・ビンソンを始めとする空母打撃群を朝鮮半島周辺に派遣したことや、B1爆撃機を韓国上空に飛ばしたり、という米国の行動が明確な戦略に基づいているのか思いつきなのかという点でしたが、どうやら12の明確なオプションを検討して戦略的に実行しているらしいということが分かり、多少の安堵をしています。もちろん戦略は戦略で結果は結果なので、緊迫した状況であることには変わりません。

また、経済の分野についてですが、国務省で要職を経験された某氏は毎回日本に対し好意的建設的アドバイスを頂きますが、今回も心に残ったものがありました。曰く、自由で公平な貿易、自由な為替取引、自由な資本移動は非常に重要だが、日本は少子化という大きな課題を抱えているのであれば、外国人労働者や移民という政治的に困難な課題に挑戦するのも良いけれど、直接投資を増やすという視点も対策の一つとして持つべきだというもの。もちろん直接投資を増やすという視点は持っていますが、そうした文脈の視点は持ち合わせていませんでした。

全ては記し残すことはできませんが、米政府内で未だにポリティカルアポインティー(政治任用職)が決まっていない状況で、いろいろな状況を肌で感じ、耳で学ぶことができました。ただ、それ以上の価値は、旧知の人々との意見交換を通じて、交友を温めることができた点です。これは何にも代えがたい価値だと断言できます。