まずは景気対策ではないか

この場で何度か触れている増税について、改めて考えていることを申し上げます。

私は、現時点での増税は反対です。景気が間違いなく悪くなるからです。ただ、消費税増税は財政構造を考えれば引き上げざるを得ない。これまでやってきた景気を理由とした単純な増税先延ばしはもう通用しません。

だとすれば、例えば5年後に焦点を定めて引き上げる。同時に数字の根拠をちゃんと示す。すべてさらけ出す。社会保障制度は今後の時代に合わせて、これこれこういう改革をします、だからこれだけ増税が何%必要なんだと。だから、新制度下では、ずるずると再び増税を求めることは絶対にありません、と言い切る。ここに選挙的な国民騙しは不要です。もう国民も知っているのだから。

そしてポイントは、その5年間に無益な政党間政争(争いのための争い)はやめ、景気回復に専念する。もちろん増税という負担を国民にお願いするのであるから自らの血を流すことを徹底する(省庁無駄削減・議員定数削減)。経済政策について政党間の政策争いは、幾らやったって構わない。政策論争はむしろ国民が望むものだから。金融政策・財政政策の両面から5年間徹底的にできることやる。そして更に、民間にもこの5年の徹底した活力アップに賛同してもらう努力をする。つまり、もうまったなしの5年間、日本人一丸となってがんばろう作戦です。

少し補足します。

景気回復のための財政出動は絶対に必要です。ただ、財政出動は何でもいいというわけではない。やはり戦略性をもった選択と集中が必要だと思っています。戦略性が第一。そしてその次に、リペアの問題。最近の酷い公共事業バッシングで、本当に必要な補修などが止まっている。地方では、老朽化した設備、結構あるのですが、こういうのはしっかりとやらないといけない。将来、私達の子供達が大きくなったときに、回りはひび割れた水道管とビルだらけでは困る。バッシングを受けるべきは、国の補助事業で各地にたった戦略性のないハコ物です。

景気対策の財源は正々堂々と国債発行しかありません。ただ最長5年です。これ以上は絶対に追加発行しない。こうした特措法を作るべきだと思います。

ついでに申し上げたいのは、なぜ震災復興の財源に枠組みの国債を発行しなかったのか。復興債であれば、昔、新幹線をつくったときのように、海外に借りたってよかったんです。それを民主党は一般会計でまるがかえしてしまいました。あっぱれですが、ものすごい予算になりました。だから私は今回の野田総理の一連の増税はもともとは社会保障ではなくて財政逼迫のためのものだったのではないかと勘ぐっています。

金融政策は前々回に触れましたので申し上げませんが、インフレ目標・日銀の国債引き受けなど、過去の例にとらわれず5年間だけやれることをやるべきだと思います。

そして自らの血を流すこと。無駄か無駄でないかは全く判断が難しい。事業仕分けも新しい視点を永田町に導入してくれた意味は大きいのですが、むしろ党内や政府内などでやるよりも、国会の予算委員会のなかに分科会でもつくってしっかりと与野党で議論する方が正しい(最近少しやっていますが)。そして、公務員給与や議員定数削減。本質的にこれらをやったから日本が良くなるというものではありませんが、やらないと国民の理解を得られないと思っています。

一番重要なのが民間や役人を含めて国民全員に5年間がんばってみようじゃないかというメッセージを送れるか否かです。