雇用を守る

今、もっとも大切なのは、当たり前ですが感染拡大を防止することであって、その為に緊急事態宣言が出され、外出自粛・休業要請が続いています。しかし、一方で世界的な景気の鈍化の中で、もっとも重要なのは雇用を守ることです。

昨日、政府は3月の雇用統計を発表しました。求人が求職を圧倒的に上回っている現状に未だ変わりはありませんが、コロナの影響で、有効求人倍率が昨年末の1.57から1.39に急速に悪化してきています。

求人から見ていくと、コロナの影響で休業を余儀なくされている企業が新規の求人を控えている実態が明らかに見えています。前年同月比の12.1%マイナス。3か月連続で10ポイント超えの悪化です。最も影響を受けているのが、製造業の▲22.8%。次いで宿泊飲食サービスの▲19.9%。次いで生活関連サービスの▲16.6%などとなっています。

一方、完全失業率は2.5%(▲0.1%)。現時点では大きな変化は見えていません。これは企業が政府の雇用調整助成金を使って休業手当を従業員に支給し、また借入等で何とか凌いでいるためで、このことは、就業時間が1時間未満であった就業者数が、前月から29万人も増加していることからも伺えます。

しかし今後の状況は注意深く見ていく必要があります。コロナの影響を甘く見て、下手に緊急事態宣言を解除すれば、感染被害から国民を救えないばかりか、最悪の経済状況を招きかねない。長期化すれば、借り入れの返済を見通せず雇用を維持できなくなる企業が増える可能性を否定することはできません。この傾向はリニアなものではなくて、加速を伴って悪化する可能性があります。

現在の失業者数が160〜170万人で推移しており、また求人は238万人ですから、休業者と見られる29万人という数がかなり多いことに気づかされます。そして実際に雇用を維持できなくなったら、連鎖的に業績が悪化、更に雇用上の悲しい数字が増える可能性があります。また、29万人のうち主に非正規雇用者で23万人となっています。最近の働き方改革の取り組みで(良い働き方改革と悪い働き方改革がありますがそれは別として)、結果的に、正規雇用者が増え、非正規雇用者が減っていたため、コロナによる雇用調整の構造問題化が早めに訪れる可能性もあります。

従って、兎にも角にも、短期決戦。緊急事態宣言の下で感染拡大を徹底的に早期に収束させ、同時に雇用を全力で守るための方策を今後も矢継ぎ早に打っていく必要があります。

本日、衆議院で補正予算が通過し、明日、参議院で可決成立する見込みです。既に実施中のものも含めれば、税や社会保障、公共料金などの支払い猶予、無利子無担保無保証の融資実施、給付金による固定費を含めた企業支援、雇用維持支援などが実施されます。ただ、重要なのは、借り入れで先行きが見通せない不安を、それこそ解消することはできませんが、軽減することはできるはずです。大きいところでは、地方創生特別交付金と、企業にとっての固定費の緩和措置。数か月固まっていたけど、また動き出すぞ、と思える環境を作ることが必要です。

地方創生特別交付金は、補正予算では1兆円が措置されました。ただリーマンの時と同額なのです。リーマンは金融危機。コロナは需要供給所得のトリプル危機に今後の金融不安がある(このことは別途)。だとしたら、同額ではマインドとして足りない。特に、国と言う図体が大きい組織できめ細かな対策ができない部分を、自治体というきめ細かな対応ができる組織に、大きな方針を定めた上で、思い切って任せるところは任せるべきです。

また、固定費は現在、家賃補償が議論されています。融資と助成金のハイブリッドタイプが主要軸として議論されますが、何よりも重要なのは、また融資かよ不安だよ、と思うものではなくて、このくらい補助してくれるんだから融資もちょっとはしないとな、と思えるものにしていくことだと思います。つまり、政策実効性というより、この際、事業者のマインドを主軸に置いたものにすべきだと思います。(10万円の特別給付金以来、特に若年層から将来世代の負担増の心配の声が聞かれますが、このことについても別途触れたいと思います。)

なお、ここからは余談ですが、コロナ後に新卒の就職意識が大きく変化しているという報道(NHK)に接しました。楽しく働きたい(37%→31%)、個人と仕事を両立させたい(25%→23%)、人のためになる(13%→18%)。そして大企業志向(56%→52%)、中小ベンチャー志向(40%→45%)。人のためというのが劇的に増加していると言います。私が思う官民の在り方の将来像、資本主義の将来像、に繋がる社会を支える担い手です。彼らを全力で応援したいと思います。