党が主導してきた経済安保政策も、党の公式な活動としては6年目に差し掛かっています。初出は2020年の「経済安全保障戦略策定に向けて」という提言ですが、当時はどの国も体系化できていなかった政策を、「戦略的自律性」と「戦略的不可欠性」及び「国際ルール形成」の3つを軸とした戦略体系に落とし込んだ、世界初の公式文書で、その後に成立することになるサイバー対処やセキュリティークリアランス、技術流出防止のための措置などが羅針盤のように描かれたものでした。執筆は小林鷹之政調会長(当時は経済安保本部事務局長)によるものです。
爾来、私自身も事務局長代理、事務局長、幹事長を経て、現在は恐れながら本部長を預かっておりますが、その間、かなり多くの政策を提言し、実現したものもありますので、ここで一旦、始めたころの経緯も含めて提言の達成度をおさらいをしておきたいと思います。なお、私は経済安保本部本部長のほかに、関連会議である安保調査会の幹事長、国家サイバーセキュリティー戦略本部の幹事長、国家インテリジェンス戦略本部の幹事長、科学技術イノベーション戦略調査会の幹事長、宇宙開発特別委員会の幹事長、を務めており、国家の強靭化を図るという一つの目的をもって、全体政策のコーディネーションを行いましたので、併せてご紹介させていただきます。分析は過去に当本部から提言した公開情報を基に、成果は政府公開情報をベースとして、第三者によって行われたものです。
■経緯概要
・2010年 ~中国が対日レアアース禁輸措置。中国による経済の武器化が先鋭化。
・2018年 ~米中対立が激化。国際秩序劣化に対応に必要な措置を党内で模索開始。
・2019年 ~有志でセキュリティークリアランス政策の具体的検討開始
・2020年秋~党新国際秩序創造戦略本部設置(コロナ後の新国際秩序形成を指向)
岸田文雄本部長、甘利明座長、小林鷹之事務局長、大野敬太郎事務局長代理
本部インナー会議でリスク点検開始
「経済安保戦略策定に向けて」発表(★)
・2021年春~「「経済財政運営と改革の基本方針2021」に向けた提言」発表(★)
・2021年秋~本部新体制発足(高市早苗本部長、山田賢司事務局長)
本部名称を党経済安全保障推進本部に変更
岸田文雄前本部長は総理に、甘利明前座長は幹事長に、
小林鷹之前事務局長は経済安保担当大臣に、私事務局長代理は同副大臣に
・2022年春~経済安全保障推進法成立
「「経済財政運営と改革の基本方針2022」に向けた提言」発表
・2022年秋~本部新体制発足(甘利明本部長、小林鷹之幹事長、大野事務局長)
高市早苗前本部長が経済安保担当大臣に
「我が国が目指すべき経済安全保障の全体像」発表(国家安保戦略向け)(★)
国家安保戦略改定(大臣&副大臣としても策定関与)
セキュリティークリアランスの実装方法をインナーに提示
・2023年春~サイバーセキュリティー及び実装方法をインナーに提示
経済インテリジェンス実装方法をインナーに提示
上記3点の公式提言「経済安全保障上の重要政策に関する提言」発表
「経済財政運営と改革の基本方針2023」に向けた提言を発表
・2023年秋~「経済的威圧など経済安全保障上の重要政策に関する提言」発表
G7広島サミットで「経済的威圧に対する調整プラットフォーム」立ち上げ合意
産総研職員の不正競争防止法違反事案
EUが経済安全保障戦略を公表
名古屋港へのサイバー攻撃
・2024年春~「「経済財政運営と改革の基本方針2024」に向けた提言」発表
経済インテリジェンス体制推進のための本部インナーTF設置
特定重要物資に半導体を追加、重要鉱物にウラン追加
セキュリティークリアランス法成立
・2024年秋~「技術流出防止など経済安全保障上の重要政策に関する提言」発表
・2025年春~「有事を見据えた経済安全保障の確保及び骨太方針に関する提言」発表
「我が国造船業再生のための緊急提言」発表
IoTセキュリティー適合性評価制度(JCSTAR)運用開始
外為法事前届け出免除制度の利用制限に係る制度改正
サイバー対処能力強化法・同整備法成立
・2025年秋~本部新体制発足(大野敬太郎本部長、阿達雅志幹事長、中曽根康隆事務局長)
「新たな安全保障環境において求められる経済的措置に関する提言」発表
中国が新たなレアアース輸出規制発表
公正取引委員会が経済安保に関連した独禁法上の基本的考え方を公表
造船業再生に向けたロードマップ公表と造船基金造成
・2026年春~「国家安全保障戦略など三文書見直し及び骨太方針に向けた提言」発表
科学技術イノベーション基本計画公表
改正経済安保推進法及び改正JBIC法成立
改正外為法成立(CFIUS)
(関連:安全保障調査会)
・2026年春~「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」
(関連:科学技術イノベーション戦略調査会)
・2025年秋~「第7期科学技術イノベーション基本計画に関する中間提言」
・2026年春~「国家安全保障戦略など三文書見直しに向けた提言」
(関連:国家サイバーセキュリティー戦略本部)
・2026年春~「国家安全保障戦略等改定や日本成長戦略策定に向けた提言」
(関連:国家インテリジェンス戦略本部)
・2026年春~「我が国の情報防衛力の強化に向けてー開かれた社会を隠れた工作から守る」
(関連:宇宙開発特別委員会)
・2026年春~「大規模市場獲得のための宇宙政策の強化・総合的展開に向けた提言」
■経済安保を始めた経緯
2010年代から、中国による経済的威圧が顕在化するなど、国際秩序に対する挑戦者の興隆に対応するための中心軸が、外交政策や防衛政策から経済政策に広がりつつある中で、当時は中国などの国際秩序への挑戦者を国際ルールに押しとどめる努力を世界は指向していましたが、2018年以降の米中対立で決定的となったのが、挑戦者が新たな独自のルールを作ろうとしているということでした。そこで、2018年ごろから今でいう経済安保措置の全体像をかなり本格的に具体的に検討しはじめたのがルーツです。
2020年に入るとコロナが国際秩序の激変を加速させたこともあり、前出の通り成すべき経済安保政策の全体像を示し、翌年2021年には骨太方針に具体的措置を書き込みました。最初に着手したのが、日本の弱みと強みを洗い出す、との小林事務局長(当時)の強い思いから始めたリスク点検です。当然内容は非公開で毎週のように行っていたと思います。
翌2021年には、事務局を担っていた小林鷹之代議士が担当大臣に、私はその下の副大臣になり、政府内部から政策を引っ張ることになりました。主眼は何よりも「経済安全保障推進法成立」と「国家安保戦略改定」でした。翌2022年には「経済安保推進法」の成立を見ましたが、国家安保戦略については必要な具体的措置の記述は果たせましたが、当初から目論んでいた戦略論への昇華までは果たせぬままとなりました。そして改めて取り組むべき全体像を示したのが「我が国が目指すべき経済安全保障の全体像」です。
爾来、レアアースや一般消費財の禁輸措置を中心とした経済的威圧が激化する中で、本格的な経済安保政策の実装に注力して参りました。上記のリストの内、★印を付した文書が我々が指向してきた全体の基本方針になります。その中で、8つの戦略、すなわち、①経済成長、②自律性、③不可欠性、④競争環境、⑤対外発信、⑥情報・保全、⑦体制強化、⑧人材を掲げました。2023年の「経済的威圧」に関する提言は戦略④の深堀り、2024年の「技術流出防止」に関する提言は戦略③の深堀り、2025年の「有事経済安保」に関する提言は戦略②と⑥の深堀り、続く「造船」に関する緊急提言は8戦略を特定産業に実装した事例です。如何に我々が体系的に政策を策定してきたかをご理解いただければ幸いです。
■フォローアップと分析結果
■コメント
(経済安保戦略)
実現できていないこととして指摘があった「経済安保戦略」について、前回の国家安保戦略改定時に必要な経済安保の措置を盛り込んでもらえましたが、地政学的戦略レベルに昇華させたものではなかったため、引き続き継続的に提言をしておりました。しかし、もはや安全保障戦略が経済安保抜きにして語れないほど状況が差し迫っていることから、付随文書として策定するのではなく、本体戦略に織り交ぜる形で国家安保戦略を改定することを既に了承しておりますので、実現する予定です。
(データセキュリティー)
現在政府において鋭意作業中でして今年中に法案提出頂くよう求めております。
(対外発信・戦略コミュニケーション)
認知戦対応については喫緊の課題だと認識しております。今年後半には深堀った議論を展開します。
(安全保障貿易管理の踏み込んだ強化)
これも今年後半には特に迂回輸出の取り扱いについて深堀った議論を展開します。
(有事を見据えた制度整備)
国家安保戦略で記述頂く予定で、具体的な検討は政府において始めて頂いています。
(経済インテリジェンスの抜本強化)
党インテリジェンス本部において必要な体制整備および具体的な措置の提言を行いました。
(新たな国際秩序形成に向けた能動的行動)
国家安保戦略で記述頂く予定ですが、更に政府に求めて参りたいと思います。











