横山大観の海上日出という絵があります。絵画には全くの門外漢ですが、ありえないほどの力強い太陽が荒波から立ち上がるその絵に、しばし眺め入ったことがあります。
その横山大観の目を海外に広げたのは東京芸大の創設者である岡倉天心でした。急激に西洋化する時代に生れた岡倉天心は、西洋化が進んでも日本古来の伝統美術は素晴らしいんだ、と、海外に訴えるために諸外国を飛び回ります。そして、意識は日本に収まらずアジア全域の精神構造の素晴らしさを説き、東洋は無意識的に西洋にひざまずく必要はないとして、アジアの覚醒を呼びかけました。
もちろん、現代的に言えばそれほど事を荒立てて洋の東西を敵対関係視することは全く必要ありませんし、近現代の軍国主義化していく際において”asia is one”という言葉が大東亜共栄圏構想にうまく政治利用されたりしていますので、岡倉天心の思想は曲解される可能性は多々ありますが、それでも伝統文化を大切にし誇りを持って事に当たる姿勢は絶対に忘れてはなりません。
そして現在、岡倉天心の一時の居住地であった茨城県五浦海岸にあった六角堂、テレビで見たことしかありませんが、災害で消失してしまっているとのこと。日本の文化芸術に誇りを感じ、日本やアジアの興隆を夢見、横山大観に力強い太陽を画かせた岡倉天心の精神は少なくとも消失しないように努力していかなければなりません。