シリコンバレーバンク破綻ー影響は限定的

米国カリフォルニアに本拠地を置くシリコンバレー銀行(SVB)が3月10日に、またシグネチャーバンクが12日に相次いで破綻しました。SVBの総資産額は2090憶ドルで史上2番目、シグネチャーも3番目と言われています。SVBは主にスタートアップ企業から預金を集め逆にベンチャー支援をしていた銀行で、ここ3年で預金残高は3倍以上になっていたということですから、急成長していたと言えます。

(背景概要)
当初の日本の主要紙には、アメリカの急激な金融引き締めによって破綻した、とだけ書かれていたので非常に不思議に思っていました。というのも、金利が上がってなぜ破綻するのかが分からなかったからですが、結論的にはSVBベンチャーへのファイナンス業務部門は問題ないけれど、資金を債権市場で運用していたため、急激な引き締めで債券市場が下落し、含み損が拡大、信用不安が徐々に拡大したため、SVBは資本増強を発表したけれど、逆にこれがきっかけでSNSなどで不安が急拡大し、ネットを通じた取り付け騒ぎとなり、資本増強策発表から僅か2日後には破綻となったということでした。未だに本業と運用のボリュームがどの程度になっていたのかは分かりませんが、大きなインパクトであることは間違いありません。

(ネットやメディア伝搬の恐ろしさ)
ただ一方で、日本のネット上には、これだけの規模の銀行が破綻したのは、世界にも余波が必ずあって、取り付け騒ぎが拡大する、金融危機に発展する、ベンチャー環境に大きなインパクト、などの激烈なコメントであふれています。これがネットの怖さで、もしネットにこうした記事がなければ、構造的にそうした信用不安が世界的に広がって、金融危機に起こるような状況には全くありません。というのも、リーマンショックの構造とは全く違いリスクが見えていることが最大の理由です。むしろ、ネットやメディアが(自らのビジネスのために)、バズるために吹聴してまわることが最大の敵だと思います。

(日本で同様なことが起こる可能性は少ない)
日本の銀行でベンチャーにある程度特化しているところはなく、ある程度リスクは分散されており、また金融政策も日銀は現在金融緩和を続けており、当面これは続けるべきですし、修正したとしても急激な政策変更は考えにくく、日本に同様のケースが生じる要素は殆ど考えられません。もちろん、長期金利は一時的に急激に下落しましたし、世界的に株価にも下落しましたが、余波は限定的だと見ています。

(米国金融当局の迅速は決断)
私が次に注目しているのが、破綻が報じられた直後の米国金融当局の対処スピードです。日本の預金保険機構に相当するFDIC(米連邦預金保険公社)は直ちに保護する預金の上限を撤廃、日銀に相当するFBRも預金流出リスクを抱える銀行への緊急融資を発表するなど、次々とスピード感をもって対策を打ちだしました。こうした迅速な対処を注目しています。FRBと米政府が金融引き締め策を実施し始めた時の彼らの記者会見を見ている限り、相当な覚悟をもっていたように見えました。すなわち金融引き締めがもたらすインパクトをある程度シミュレーションしていた可能性があるのだと思います。それが危機対応にも繋がっていると想像しています。危機対応の8割は日頃の備えからと言われます。

(日本の場合の危機対応)
コロナが蔓延しはじめ緊急事態宣言を初めて出したあたりの日銀の対応もかなり早かった。リーマンショックの時に相当大きな反省が各国金融当局及び中央銀行にはあり、真剣な対策を検討しつづけている成果なのだろうと理解しています。従って、今回の米国FRBがとった緊急融資くらいはできるはずです。日本は、運用権限をもっている限り、適切な対応ができる状況にあると理解しています。ただ、法改正などの制度変更を伴う場合、どれだけのスピード感をもって実施可能なのかは検証が必要です。