自由で開かれたインド太平洋~新たなプラン

先日、岸田総理が電撃的にウクライナを訪問し、後日、国会にて総理からの報告がありました。それはそれとして、実はそれに先立って訪問したインドで発表した外交戦略の方こそ、本当に重要な意味があるのだと思います。タイトルの通り、発表されたのは「自由で開かれたインド太平洋のための新たなプラン」です。

先月の2月24日で、ロシアがウクライナ侵略を開始してから丁度1年であったこと既に書きました。
https://keitaro-ohno.com/11875/

その時にも触れたとおり、G7をはじめとした先進国とグローバルサウスと言われる新興国の間で、微妙な隙間風が吹いており、国際秩序の安定化のためには、その隙間を何としてでも埋めないといけないのが今の世界の現状です。

ロシアのウクライナ侵略から現在までに行われた国連総会決議の結果を以下に示します。

国連総会決議の投票結果(賛成以外=反対・棄権・無投票)
決議内容(日付)賛成反対賛成以外
非難決議(2022.3.3)141552
人権委除名(2022.4.7)9324100
併合反対(2022.10.12)143550
賠償要求(2022.11.14)941399
即時撤退(2023.2.23)141752

侵攻当初の非難決議では141か国の賛成票が得られた一方で、続く国連人権委員会での除名採決での賛成票は93か国に留まりました。この時、棄権や無投票も合わせた反対は100か国に上りました。続く併合反対決議では、143か国の賛成が得られたものの、賠償要求は94か国となりました。

すなわち、ロシア権益に直接影響するような強い決議であれば賛成国が減り、賛成よりも反対+棄権+無投票が多くなる傾向にあるということです。特に米国が主導した人権委除名決議は、採択こそされたものの、影を落とす結果となっています。

ロシアは経済力はそれほど大きくないものの、更にボストークと呼ばれる軍事演習や武器供給、豊富な資源の供給、更には食料供給という構造を利用して、多くの国に影響力を行使しているはずですし、中国も中ロ関係を通じて経済的影響力を行使しているのではないか、と言われています。

いずれにせよ、国際世論を形成できなければ秩序は維持できません。先のブログ記事での拙文はそうした課題認識を示したものでしたが、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)~新たなプラン」は、まさに具体的な取り組みの方向性を打ち出したものになっています。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100477659.pdf

FOIPは価値を含む国際政治ビジョンですが、その中核的な理念は、開放性・多様性・包摂性であって、グローバルサウスとの連携強化にはとても相性がいいはず。新たなプランでは平和と地球規模課題に対処することを明示的に目的としました。具体的な取り組みは資料をお読み頂ければと思いますが、新たなアプローチとして、JBIC等を中核としてODAを戦略に使い、民間資金動員型の無償資金協力枠組みやスタートアップ出資に対応することとなっています。以下、取り組み内容をざっくりと紹介します。

1.平和の原則と繁栄のルール
弱者が力によってねじ伏せられない環境を醸成するための取り組み。具体的には一方的な現状変更への反対と対話を通じた紛争解決。さらにはWTOを基礎としつつCPTPPなどEPAやIPEFを通じた連携強化。そして不透明・不公正な観光を防ぐためのQII(質高インフラ)に関するG20原則や透明な開発金融。

2.インド太平洋流の課題対処
国際公共財(5点)の強靭性・持続可能性の向上。具体的には「アジアゼロエミッション共同体」や「ブルーオーシャンビジョン」などの国際枠組みを通じた気候・環境やエネルギー安全保障。食料安全保障としての新興国支援。ユニバーサルヘルスカバレッジやアセアン感染症対策センターなどの国際保健。防災・災害対処協力。偽情報やサイバー犯罪などを含むサイバー協力。

3.多層的な連結性
FOIPの中核的な取り組み、域内の連結性を強化し脆弱性を克服。具体的には、東南アジア(JAIF)、南アジア(産業バリューチェーン構想等)、太平洋島しょ地域(パラオ国際空港・海底ケーブル・能力構築支援など)などさらなる連結性強化の取り組み。知識と経験の繋ぐ筑波大学マレーシア分校等、研究室と現場をつなぐ遠隔ICUサービス提供等、起業家と投資家をつなぐスタートアップ支援等、人の視点で知の連結性を強化する取り組み。Open-RANなど高信頼デジタル技術推進と海底ケーブルなど情報通信インフラ整備などデジタルコネクティビティ。

4.海から空へ広がる安全保障・安全利用の取り組み
従来の海洋のみならず空域を含めた公域全体の安全・安定を確保。具体的には、海洋における法の支配三原則の徹底。巡視船・機材提供・輸送インフラの支援や、人材育成IUU漁業対策など海洋法執行能力の強化。能力構築支援・共同訓練・法的基盤整理(RAA/ACSA含む)、新たな支援枠組み(資金)、海洋状況把握の強化などによる海洋安全保障の強化。そして空の状況把握能力向上、ドローン等新技術の協力など空の安全利用の推進。