経済安全保障上の重点課題として、セキュリティー・クリアランス、サイバー・セキュリティー、経済インテリジェンスの3点をセットを、党経済安全保障推進本部で提言として取りまとめ、安全保障調査会、サイバーセキュリティ戦略本部、デジタル社会推進本部との連名で、政府に申し入れを行いました。小林鷹之前経済安保担当大臣が事務局長を務めていたときからの党としての重要政策です。
(セキュリティー・クリアランス)
既に昨年から国会で議論されるようになったため、聞いたことがあるかもしれませんが、重要な情報を保全し、その情報を取り扱う者の適性を評価し認証を与える制度です。日本は先進諸外国と比べて遥かに劣っているため、例えば政府から認証を貰えないために海外事業や研究に参画できない場合があり、早急に整備すべき課題で、国会では与野党から早期整備を求める意見が相次ぎました。提言では、遅くとも来年の通常国会での成立を求めています。
大まかな内容ですが、政府保有の情報については、秘匿性と分野に応じて情報区分を詳細設計し、それに応じた適正評価の調査深度と適格性認証を属人的(場合によっては施設に)に付与する制度を求めています。民間保有の情報については、重要インフラを念頭に事業者と協議のうえで国際的に均衡のとれる必要な範囲で適用し、それ以外についてはガイドラインを念頭に置くことを求めています。念のためですが、この制度は、認証を得ようとする人に対する制度ですので、政府が勝手に適正評価をこそこそやるなどというものではありません。本人同意が前提です。
(サイバー・セキュリティー)
アクティブ・サイバー・ディフェンス(能動的サイバー防御・ACD)も、ずいぶん前から必要性が指摘されておりましたので、お聞きになったことがあるかもしれません。サイバー攻撃は、様々なサーバーを経由して行われるため、少なくともどこからの攻撃かを特定しない限り、受動的に防御するのは困難とされています。ところが日本はこれまで受動的なサイバー防御しか行えないとされてきました。パソコンにウイルスソフトを入れるのは受動的防御です。しかし、ウクライナの例を挙げるまでもなく、日に日に国際社会のサイバー攻撃の烈度が高くなっており、先進諸外国からも日本の脆弱性を厳しく指摘する声が大きくなっていました。
提言では、内閣官房に運用機能を新たに設置し、そこでACDを実施する組織を置き、加えて民間とのインシデント共有や対処調整を行う機能、他の行政組織のサイバー防御の対処調整を行う機能、インテリジェンス機能、国際調整機能のほかに官房機能を置き、サイバー防御の一元的司令塔機能とすることを求めています。ACDは、実施権限や関連法令との関係整理も必要です。来年の通常国会を念頭に1年を目途に法改正と体制整備を行うことを求めています。
(経済インテリジェンス)
横文字が多くて恐縮ながら、インテリジェンスとは意思決定に資するよう様々な情報を分析して得られる知見のことで、単なる情報とは異なるものです。現在は、内閣官房に設置された内閣情報調査室が政府の一元的情報集約組織となっていますが、経済安全保障上の情報はこれまで主な対象ではありませんでした。例えば、他国から経済的威圧を受けた場合、あるいはサプライチェーン分断が生じた場合、起こり得るインパクトの評価と対処方針を示すためには、何よりも経済インテリジェンスが重要になります。提言では、インテリジェンスの収集・集約・分析が正しく機能するための諸施策を実行することを求めています。
いずれにせよ、政府の検討が進捗した段階で、再提言を行うことを前提としたものです。
(参考)
・NHK:自民“「能動的サイバー防御」導入へ法整備検討を”首相に提言