防衛装備品移転の必要性

防衛装備品の海外移転促進について、中身の議論をリードしてきた者の一人として、改めてなぜ今必要なのか、触れておきたいと思います。殺傷兵器の海外移転は「死の商人」への道だ、と一部の方々が賑やかですが、そうした向きはほとんどは、現状の国際認識が少し薄いように思います。

(過去の議論)

海外移転には、そもそも国際ルールがあります。武器が懸念国に流出し国際社会の平和を脅かすことが無いよう、ワッセナーアレンジメントという安全保障貿易の国際管理レジームで規定されています。日本はそれを受けて外為法で規律しており、特に防衛装備品については上乗せ規制として、防衛装備品移転三原則というルールで規定されています。そしてそのルールには更に運用指針という下位のルールが定められていて、実は焦点はこの運用指針にあります。

直近2年前にも改定されたその運用指針。その当時も私は協議会のメンバーとして積極的に議論に参加しましたが、その時は自民公明の連立でした。決定的に対立したのが5類型と呼ばれる目的制約を撤廃するか否かでした。自民党はその当時から撤廃を主張していましたが、公明党は反対で折り合いがついておりませんでした。

先般、連立政権の構成が変わり、新たに維新が連立に加わったことから、改めて5類型の在り方を含めて、防衛装備品の海外移転ルールの議論が始まり、今般結論を得たものです。

(移転の意義)

イラン事案を敢えて引き合いに出すまでもなく、国際秩序の劣化は甚だしく、戦後最も厳しく複雑な安保環境に直面しているなかで、日本にとって望ましい安全保障環境を創出するため、防衛装備品の海外移転の役割は極めて大きいものがあります。

まず装備品の海外移転は対象国との関係を強化する作用が働きます。ニーズのある国があったとして、日本が移転しなければ、他国が移転します。その場合、日本が移転する方がいいのか、自分に有利な状況を作ろうとする他国が移転するのがいいのか、明らかではないでしょうか。

また、管理が厳格で技術力の高い日本が国際社会に貢献した方が、適当なものを適当に売るまくる国が世界で幅を利かせるより遥かに国際秩序は安定するはずです。

加えて装備品の海外移転によって、国内防衛産業の生産基盤や技術基盤が強化されます。これは防衛装備の海外依存を低下させるとともに、持続可能性を高めることに繋がります。

(具体的な中身)

今回、自民・維新が共同提出した具体的な提言内容は、完成品や部品、技術や役務を含むすべての防衛装備品の移転を、適切な管理体制を構築する代わりに原則可能にするものです。いわゆる5類型撤廃です。

基本的には「武器」「非武器」に分類した上で、その分類に応じた移転要領を設定するものです。(日英伊共同開発次期戦闘機の際に設定した既存の厳格管理枠組みは存置します。)

非武器については移転先の制約を設けず、また武器については、国際約束の締結国に限定し、また「武力紛争の一環として厳に戦闘が行われていると判断される国」への移転は特段の事情がある場合を除いて原則不可としました。

移転管理については、日本の防衛力整備への影響や、自衛隊の運用に与える影響のほか必要な項目を拡充するほか、過去に移転実績のない武器や、政治的視点から必要な場合には、国家安全保障会議で審議することとし、また、与党への事前調整を求めています。

加えて国会や国民への説明を十分に行うことを求めています。

最後に最も重要なことですが、移転の実績を確実に積み上げる必要があります。ルールを変えただけでは安全保障環境が良くなることはありません。政府主導で産業界との連携を図り、戦略的かつ効果的に移転を推進する必要があります。これについては、今後の戦略三文章の改定の議論で検討することとしています。