
アメリカとイスラエルがイランを攻撃してから2か月が経とうとしています。原油の93%を中東に依存しているため、日本は甚大な影響を受けています。
政府は、資源供給は足りてるとの説明も、現場からは調達難の声が上がっています。党のイラン情勢に関する関係合同会議で業界団体からヒアリングをしたところ、窮状の声を頂きました。いったいどうなっているのか、今日はそのことに触れたいと思います。
端的に言えば、供給量は足りていますが、皆さまご存じの通り、各地で目詰まりが生じています。業界の様々なところで、不安から余剰調達を試みているということです。個の単位としては合理的な行動なのですが、全体としては、他の誰かの不足に繋がり、その情報が伝搬して不安が拡大し、目詰まりが拡大するという構図です。従って、政府は危機感をもって対応していますが、危機感を外部に伝えてメッセージとすれば、それが更に不安の連鎖に繋がり、結果的に目詰まりが拡大するということが起きます。
当初より文字通り不眠不休の努力を役所の担当職員は続けています。現場の声に対して1件1件直接対応をしています。お困りの事業者は是非、下記の経産省中東情勢対応ポータルサイトにアクセス頂き、自らの状況を政府にお知らせ頂きたいと思います。全ての事案に職員が人海戦術で対応に当たります。元売りからの直接販売も開始されました。国民生活や経済活動に極めて深刻な影響を及ぼすような事業者が優先されるとは思いますし、ご連絡頂いた事業者の上流側の調整をすることになるので、全てのお問合せに経産省からアクセスするわけではありませんが、必ず状況把握と上流調整に動きます。
https://www.meti.go.jp/chuto_josei/
では本当に全体的に足りているのかについて。原油備蓄の放出は当然として、代替調達の可能性を追求してきた結果、現時点では原油については必要量の過半の代替調達に成功し、備蓄の放出スピードもコントロールできるようにまでなりました。備蓄量は必要量の8か月分ですので、理屈上は必要量の16か月分を供給できることになります。
課題もあります。原油から精製されるナフサです。ナフサはあらゆる化学製品に使われる原材料ですから日本経済にとって重大な影響がでます。国内で精製されるのは必要量の4割で、残り4割をホルムズ海峡由来、2割をその他由来で調達しています。現在その他由来の倍増に成功しているため、在庫を併せると当面は維持できますが、更なる努力が必要になります。現在、川中製品(ナフサ由来の中間製品)の輸入拡大や調達保証支援なども検討しています。
いずれにせよ確かに現時点では供給量は全体では足りていますので、不安が必要以上に拡大しないようにしなければなりません。例えば昨年の令和の米騒動でもコロナでもオイルショックでも同じような現象が観測されました。こうした状況で、需要抑制を訴える方もいますが、供給が十分に足りているにもかかわらず、需要抑制を宣言すると、供給不足宣言したものと市場から見なされ、更なる不安と目詰まりを誘引してしまうのは明らかです。
戦時中も需要抑制政策が行われた結果、市場は供給不足をより強く認識するため、更なる調達難と価格上昇に見舞われました。生産力の低下、生活水準の急落、インフレの深刻化、闇市の拡大、統制経済の硬直化などです。従って、発動には極めて慎重であるべきは当然です。しかしその上で、混乱を誘引しないで合理的に国民や社会と認識を共有しながら発動できる方法があるのではないかと考えています。
不安が不足を生む市場。不安が目詰まりの本質的原因ならば、少なくとも状況把握と認識共有が図れる仕組みを作ることが必要です。平たく言えば、どうなっているのかと何をするのかを事前に社会と共有しておくということです。これは、有事の際に自衛隊の行動を規定するための事態認定制度と類似のもので、経済安保制度版のものをイメージしています。追ってご報告したいと思います。
改めて、本日、イラン情勢に関する関連合同会議(小林鷹之会長)において、業界ヒアリングを受けての第二段の提言を行いました。
提言では、政府発表と現場の声に大きなギャップがあることを認識した上で、適正価格維持に向けた政府支援、代替調達確保などによる供給確保、適正な価格転嫁に向けた政府指導などを求める声を政府に届け、代替調達や目詰まり解消に向けた対応を求めました。
具体的には中央アジアや中南米、アフリカからの輸入を含めた多角化、原発や石炭火力の利用検討や、中長期的には太陽電池や地熱発電を含めて化石燃料依存の脱却、また現物市場と金融市場の双方での市場安定化に向けた国際的努力や、重要物資の更なる供給安定確保、海上保険の政府再保険などを提言し、総理に手交しました。全ての課題について十分に認識をされており、引き続き取り組まれるものと思います。