日経BPより「日本未来図2030」が刊行

先般、日経BP社から刊行された、「日本未来図2030」(自由民主党国家戦略本部編)に寄稿した文を掲載いたします。この本は、党本部国家戦略本部の中で長きにわたって議論した結果をまとめた本です(実はこの会議には大きな想いを持って結構時間をかけて議論に参加したんです)。ご笑読ください。

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演繹と帰納の狭間で

夢なき者に理想なし。理想なき者に計画なし。計画なき者に実行なし。実行なき者に成功なし。故に夢なき者に成功なし。明治黎明期に活躍した政治家の精神的支柱となった吉田松陰の言葉です。この言葉には、私が申し上げたいことが凝縮されており、国家戦略本部の意義を表しています。

政策を議論する上で最も大切なことは、3つの基本軸、つまり、基本的・長期的・国際的な視点を常に意識することであり、更にこれらの軸について、演繹的・戦略的・マクロ的視点と同時に、帰納的・実務的・ミクロ的視点の両面から見つめることだと思っています。

つまり、何のための政策なのか、どうして必要なのかという原点を明確に意識しつつ、過去から現在を見つめ、逆に未来から現在を見つめ、その時間軸の中で連続性は必要なのか、長期的に持続可能なのか、などを見つめ、一方で、世界の中の日本を、また日本から世界を見つめ、その空間軸の中で政策の立ち位置を吟味する視点です。

社会は多様化しています。つまり生じる問題も多様化しているということです。人口減少、地方創生、社会保障、経済財政、外交安保などと一口に言われますが、これらでさえ相互に密接に複雑に関係しています。生じた問題を逐一議論するという帰納的視点は絶対に必要ですが、俯瞰的総合的に見て問題点を単純化し、見通しを良くして演繹的視点から議論し、演繹と帰納の狭間を生める作業が最も大切です。

自民党には、多くの会議体が設置されていますが、第二次安倍内閣で再始動となった国家戦略本部は、まさにこうした演繹と帰納の狭間を生める初めての会議体であり、私自身、参加メンバーとして、本当の意味での戦略的国家形成の始まりにしなければならないとの強い思いをもっています。今後とも、自民党国家戦略本部の壮大な取り組みに期待をお寄せ頂ければ幸甚です。