本日、自民党本部の財政再建特命委員会の平場(議員全員対象)の会議が開かれました。これまで、役員のみで議論してきたもので、私は役員ではないので初めての参加となりますが、漏れ伝わってきている情報と同じ方向の中間報告案が提示され、自民党による政治の財政再建に対する強い意志を表明する内容となっています。
というのも、現在、国際公約にもなっている財政健全化の具体的目標は、2020年までにプライマリーバランスを黒字化することですが、どうやってこれを達成していくかを早急に公にする必要があります。夏までにはと言われています。で、政府の経済財政諮問会議は、おおむね9.4兆円の圧縮をしなければ達成できないと発表していますが、具体的には、まぁ、出費を抑える必要もあるけど、景気が良くなったら実入りも増えるんで、どうしますかねぇ、という、ある種含みをかなり残した発表になっていました。
今回の自民党中間報告は、それよりも一歩踏み込んで、歳出削減をやっていくんだ、出費を抑える必要があるんだ、と明確に謳いました。リーズナブルな経済成長を見込んでも歳出削減に踏み切らなければ赤字は増える一方だからです。国債は、まだ国内消化できていますが、そろそろ限界ですから、これ以上増えると、デフレ脱却はとんでもなく遠ざかる危険性があります。
もちろん、この方向性に対する反論もかなりでました。反論は、ご想像の通り、デフレ脱却できないと健全化なんて無理じゃない、というもので、ごもっともな意見です。ただし、問題はこの後で詳述しますが、明確なシミュレーションも行わないでこの両者の議論を戦わせてもあまり意味を感じません。
いずれにせよ、政治的には極めて正しい中間報告になっていると思っています。つまり、何をやるかという意思は明確になりました。しかしながら、それ以上に重要なのが、どうやるのか、であるし、もっと重要なのが、どうやり続けるのか、という問題です。
幾つかの論点を書き出しておきたいと思います。
・目標数値について、プライマリーバランス(PB)の健全化というフローの議論とは別に、累積債務のGDP比というストックの議論も重要だという指摘が以前から出ていましたが、その通りではあります。ただ、ストックが重要だと言ってフローの議論をしないようなことは健全ではありません。両方大切です。デフレ脱却優先の政治ムーブメントのために、累積債務対GDP比指標を使うのは間違いです。
つまり、たまには真面目に書くと、名目金利が低いままだと、PB赤字でも名目成長率が上昇すれば累積債務対GDP比は低下します。もちろん景気回復に伴って名目金利が上昇すれば事態は変わります。いずれにせよ、累積債務対GDP比はこれまでのデフレ下とは今後明らかに違う動きになると考えられます。一方で、PBを無理に健全化すれば名目成長率の低下を通じて累積債務対GDP比は上昇します。
・こう考えれば、より詳細な経済推計が必要なはずです。ダイナミクスを考慮した多角的シミュレーションによる見える化を進めなければ絶対にダメだと思っています。見えないのに、どうするこうする、という議論もないだろうと思います。このことを私は何度か指摘をしてきましたが、残念ながら、政府は出してくれません。というか、どうしてもそこに政治的な意味合いが含まれてしまうので、出しにくいのかもしれません。でも、多角的シミュレーションであれば出せると思うのですがね。
・ダイナミクスを考慮した推計ができれば、次に、単年度予算ではなくて、より時間軸を考慮した財政計画をシミュレートすべきです。
・財政再建とデフレ脱却の道筋が見えるいくつかの解をもとに政治が徹底的に議論し結論を出し、その上で、やり続けるために財政健全化に向けた法整備を行うべきです。財政を硬直化させるものではなく、財政再建とデフレ脱却に向けた制御アルゴリズムとしての立法化です。
今のままだと、人型ロボットを制御するのに、種々のセンサーも付けないで、各関節モータをOnかOffだけで歩かせようとするように見えてしょうがありません。