TPP大筋合意

TPPが大筋合意となり結果が公表されました。今日は概要について触れておきたいと思います。

大きいところから申し上げれば、関税撤廃率は他国が99%以上なのに対し日本だけ95%。また農林水産品の関税非撤廃率は日本だけ突出して19%と高く、がんばったカナダでも5.9%、その他ペルー4%、メキシコ3.6%、米国1.2%で、残りは1%未満となっている。即時撤廃も他国平均で84.5%なのに日本だけ突出して低く51.3%。国際的視野からすれば(海外から見れば)日本はかなり頑張った交渉を行った(我儘言った)と言えます。

一方、自民党も国会も農産品重要5品目について国益を守るとした決議を行って参りました。関税を残すラインは5品目の関税項目が586ですが、結果は412。上記データから見れば明らかに守った率は高いのですが、ここは微妙なラインであって中身を精査しなければ分かりませんので下記に簡単に雑感を書いておきたいと思います。

米については800万トン程度国内で生産されているうち、最終的に7万トンの輸入枠設定ですから1%に満たない。少量でも価格に大きく影響するという生産者側の意見もありますがこれは注意深く見ていく必要があります。

麦については生産者保護の観点から従来の国家貿易制度は維持して枠外税率も維持となりました。一方で枠内については国別に輸入上限枠を設定(最終25.3万トン)した上でマークアップは45%削減でぎりぎり合意。半分でもカバーする振興策財源確保に努力すべきです。

牛肉については38.5%から最終9%まで削減していくことで合意。撤廃にこそなりませんでしたが、かなり譲歩したと当初思いました。しかしセーフガードも付いており、何よりも16年で30%強ですから年に約2%。更に輸出は例えば対アメリカだと当初から15年は現在の2~40倍の関税撤廃枠をまたそれ以降は完全無税得ることができているので差引で考えればあり得ないとは言えないと思います。

豚肉は現行の差額関税制度を維持して分岐点価格(524円/kg)も維持で合意。従価税は0%に(現行4.3%)。ただ重量税は482円/kgを10年で50円/kgに削減となりました。輸入価格が524円程度に誘導することは変わらずなのですが、安い肉の輸入が多くなるかどうかは動向に注目しなければなりません。セーフガードもありますが、振興策は拡充したいところです

以上総合すれば振興策等の拡充で対応できる範囲ではあると感じますので、冒頭申し上げた他国との撤廃率の差を考えればぎりぎりの交渉を行ったものと思います。今後、振興策財源確保は論を俟ちませんが、輸出の拡大を含めた環境整備に努めて参りたいと思います。

一方で、当然ですがTPPは上記で述べた物品市場アクセスだけではなく、物品以外のサービスなどの市場アクセスや、知的財産権、労働、政府調達、金融サービス、電子商取引、紛争解決、衛星植物検疫措置など、多くの課題について取り決められたものですから、これらは主に日本にとってプラスのもの。締約国同士が同じビジネス条件となるので、農産品も含めて進出のチャンスでもあり、またグローバルなサプライチェーンの構築によってビジネスチャンスが拡大するため、大いに期待できます。さらに言えばRCEPなど他の貿易協定の努力を怠ることはできません。