来年度の税制大綱が発表されました。少し遅れまして恐縮ですが、私の考えも併せてどうなったのかを書き留めておきたいと思います。
税制大綱
https://www.jimin.jp/news/policy/131067.html
・消費税
まず一番大物の消費税。2017年4月から10%になることは既定路線ですが、ご存じのように軽減税率が導入されることになりました。対象は外食・酒以外の食品と新聞です(8%に据え置き)。条件は詳細に現在議論中ですが大筋は決まっています。この軽減税率については、申し上げたいことも多くありますが、既に決まったことですので、決まったベースであるべき姿を今後とも議論していきたいと思います。
ただし絶対に避けなければならないのは、対象品目の無制限な拡大です。消費税率がもともと高い欧州のようなケースでは別ですが(日本もベース税率をそこまで高税率にする覚悟があるなら別ですが)、無制限に許すべきではありません。そもそも消費税は社会保障に使うものなのですから。本来低所得者対策をしなければならないのに、高所得者をより助けて?しまう軽減税率は結局は巡り巡って低所得者を助けられなくなるという逆進性の問題を抱えていることをよく考えなければなりません(そのほか問題はいくつかあります)。
なお対象品目として新聞が駆け込みで導入されました。一体どうなのかしらとは思います。宅配する週2回以上発行するものが対象になるのだそうです(つまり駅やコンビニで売っているものは対象外)。今後、雑誌・書籍も検討するとのことで、有害図書をどう排除するのかなどがポイントだとか。
また事業者納税額の把握について議論されているインボイス制(税額や税率などを記載する請求書)、6年後から導入することとなりました。それまでは簡素な方法となります。
・法人税
来年度から実効税率が20%台となり、ようやくドイツとほぼ同等の法人税となります。設備投資や賃金の更なる向上に充てていただければと思います。また財源については法人税を下げてその分まるまる個人からもらうということではいけないわけで、課税ベースの拡大も行うことになっています。
問題は、中小企業です。法人税減税を行っても赤字企業が多い中小企業の場合、現時点ですぐにメリットはありません(もともと優遇されている)。だいたい4割くらいの中小企業が経常収支マイナスです。なぜ赤字企業がこれほど多いのかというのは、細かくは書きませんが、個人の所得税の在り方と大きく関係します。そういったことを総合的に勘案して、今後も俯瞰的戦略的に議論を進めて行く必要があります。なにせ日本の9割以上が中小企業であって活力の宝庫ですから。
ちなみに中小企業が新規設備について固定資産税が3年間半分になる制度が導入されます。
・所得税
今回の目玉は三世帯住宅にリフォームする際の税額控除。重要な一歩になるのだと思います。理由は長くなりますから遠慮しますが、核家族の進展が日本に大きな悪影響を及ぼしているということに尽きます。フランスのような多世帯同居を促進する家族税制が必要だと考えていますが、技術的には種々問題がありました。リフォームに目を付けたという点では少し主軸からはずれますが、大いに賛同するものです。そのほか主要なポイントは以下の通りです。
・自宅を売却する際に3000万円の特例控除。
・医療控除について市販薬促進のため薬に限って控除を拡大。
・国立大学法人等への寄付について学生支援のために充当されるものについては税額控除制度を導入
・公益法人への寄付について控除を受けられる要件を緩和。
・所得税2
来年度に向けて抜本的な改正を目指しています。所得税制が時代にマッチしなくなってまいりました。働き方が多様化し、家族の平均的姿も変わってきました。成長期の平均的日本人の姿はサラリーマン世帯である給与所得者。時代が進んで一億総中流と言われ始めた時代、累進カーブを相当フラット化しました。が、少子高齢化に伴った社会保険料の増加で、低所得者の負担が増えた。この世帯の出生率を改善しなければ少子化には歯止めがかけられません。来年に向けて議論を尽くしたいと思います。
・その他
・企業版ふるさと納税が導入されます。地方自治体へ寄付すれば3割を法人税から控除される制度です。
・遊休農地は固定資産税が1.8倍になりますが、農地バンクを通じて貸し出すと半減されます。
以上、ご紹介したものは、ごくごく一部ですので、詳細は前掲の税制大綱をご覧いただければと思います。