先日、イギリスのメイ首相が来日。安倍総理との会談を経て、小野寺大臣と海上自衛隊の護衛艦「いずも」を視察に行かれました。その当日、私自身は大臣のバックアップ要員。そして後日イギリス大使館にてメイ首相に直接お会いし「いずも」乗艦のお礼を申し上げる機会もあった。そんなことで、この際、「いずも」と日英関係を強化すべきことについて少し触れておきたいと思います。
海上自衛隊の艦船の命名は、大体において、旧軍時代から使われていた艦船の名前を継承することが多々あるのですが、現在、一応の基準があって、輸送なら半島など(例おおすみ)、掃海なら島や海峡など(例ぶんご)、潜水艦は潮流に関する天候気象か動物(例おやしお)、護衛艦は雷や霧や風雨などの天候気象など(例むらさめ)、特にミサイル護衛艦は山岳名(例こんごう)などとなっています。だから、「むらさめ」と聞いたら何となく護衛艦かな、「ちょうかい」だったらイージスかな、「おやしお」だったら潜水艦かな、などとなんとなく想像がつく。
「いずも」はヘリコプター搭載型の護衛艦(DDH)。一見、空母に似た形なので一度は
ご覧になったことがあるかもしれません。出雲ですから雲が立ち上ることです。そして日本では一番大きな護衛艦で、アメリカの最新の空母に比べるともちろん小さいですが、それでも旧軍の空母「加賀」などよりも大きい(大きいから何だという話ではないですが)。確かに諸外国との共同訓練で他国艦船と並走する「いずも」を見ると、その大きさが際立っています。そして、「いずも」も昔からある(今の「いずも」は2代目)。
初代は装甲巡洋艦の出雲。小野寺大臣もメイ首相との会談冒頭で言及された通り、19世紀末にイギリスに発注され1900年に就役、日露戦争を戦っています。そこから2次大戦末期の1945年7月に米艦載機の攻撃で沈没するまで45年間も現役でした。出雲の名前が有名なのは、日露戦争のころの逸話によるもので、出雲は、日本船団を沈めに沈めて大打撃を与えたロシアの装甲巡洋艦リューリクの撃沈に成功する。恨み骨髄だった筈です。しかし、逆に生存者救出を行ったのが出雲。国内外からの称賛を浴びたという史実が残っています。
実はこうした美談は意外と結構ある。第二次大戦中、駆逐艦の雷(現在同名の護衛艦「いかづち」がある)の工藤艦長は、当時、撃沈した英の巡洋艦の乗組員422人を救助し、雷に乗艦した英兵士を前に英語で「貴官らは日本帝国海軍の名誉あるゲストである」とスピーチを行った。ただ、それだけではなく、本当の美談はここから。この時の一人で後に外交官になったサムエル・フォール卿が退官したのちに日本を救うことになる話です。
1998年のこと。天皇陛下が訪英を予定した際に英国内で日本軍捕虜となった軍人らによる反対運動が激化。しかしフォール卿が間髪入れずに当時の体験を「ロンドンタイムズ」に寄稿し「友軍以上の厚遇を受けた」と回想、反対運動は下火になった。フォール卿は更に2003年に訪日し、工藤艦長の墓前に手を合わせたとのことです。
英国は、いろいろな意味で、これから日本にとって、これまで以上に大変重要な国になる事は間違いありません。安全保障協力も積極的に進めていくべき国です。