今から8年前の初めての選挙に挑んだ時から、基本政策はほとんど変えていません。これはWEBにも「私の基本政策」として記載していることですが、多少中身は時代の変化や政策の実現度合いに応じて変えていますが、政策の柱として立てている項目は変わっていません。
その中の社会保障では、若者支援策を積極的に打っていかなければならないという思いを持ち続けています。私自身は残念ながら大きな政策を打ち出せてはいませんが、しかし政府が昨年、全世代社会保障というバズワードで打ち出した政策は大いに賛同しています。そして消費税増税を機に、具体的な政策が昨年末から今年にかけて打ち出されています。
若者支援の理由は単純で、国民金融資産のうち66%以上を65歳以上が保有し、負債も併せたネットでの金融資産で言えば90%以上を65歳以上が保有する(若者は言えや車のローンがあるから)という指摘がある現状を前に、相変わらず高齢者中心の社会保障給付を続けていたら、必然的に高齢者への社会保障給付は減らざるを得ないことに、この国の将来を案じているからです。
もちろん高齢者全員が裕福であるわけでなく、個別に見ればもっと給付をすべきなのは明らかです。なので、社会保障全体とすれば若者支援にシフトしつつ、高齢者支援は裕福層から困窮層にシフトしていくべきだと思っています。
で、昨年度の社会保障関係費(国費)は、34.1兆円でしたが、今年度予算案では、35.8兆円と見込まれています。その構造は、34.1から自然増(人口構成変化)で+0.53兆円、診療報酬で+0.05、年金スライドで+0.01、介護総報酬割や薬価改定などの歳出改革で▲0.17、消費増税の社会保障充実で+1.2、その他社会保障関係費で+0.1で、合計35.2兆円となっています。
消費税増税分の使い道は、
1.幼児教育・保育の無償化 3410億円
2.高等教育の無償化 4882億円
3.待機児童解消 358億円
4.年金生活者支援給付金 4908億円
5.低所得高齢者介護保険軽減 663億円
6.予防健康のための自治体支援 700億円
7.医師の働き方改革 183億円
8.医療情報化支援基金拡充 768億円
となっています。ここで分かるように、若者系が8650億円、年配系が7222億円で、若者支援が多い(予防健康はどちらとも言えませんが年配系としてカウントしています)。なので、納得はしています。
ただ、年配系は医療と介護がこれから大きな課題なはずで、今回は特に介護について書きのこしておきたいと思います。令和(R)2年度予算の味付けの方向は正しいと思っています。
今一度、冒頭の今年度社会保障関係費35.8兆円の構造を少し詳しくほりさげます。現在政府は社会保障関係費の自然増を5000億円以下に抑えることが至上命題となっているので、歳出改革もしているのですが、R2の歳出改革の▲0.17兆円のうち、薬価などの改定が▲0.11兆円、介護総報酬割改革分は600億円と見積もられています。600億円を削った。えっ?と思いきや、介護費の支出を削った分、高所得者層の負担を増やしたという構図になっています。つまり政府支出分を高所得者層に付けたという構図です。だから高所得者層から困窮層へのシフトは行われていると言えます。
もう少し掘り下げます。介護保険の総報酬割とは何か。介護保険制度が始まって20年経ちますが、基本構造は、税金で50%、残り50%を40歳以上に保険料を課すことで賄っています。皆さん40歳を超えると介護保険納めていますよね。で、その皆様から徴収する50%のうち、23%は65歳以上(第一号被保険者)から、27%は40~65歳の方々(第二号被保険者)から徴収しています。ちなみに、50%の税金のうち、25%は国、12.5%は都道府県、12.5%は市町村が負担しています。
で、この40~65歳の第二号被保険者は、自営業者は国民健康保険、中小企業従業者は協会けんぽ、大企業従業者は会社の健康保険組合+介護保険となっています。
で、実は4年前までは、皆さまから徴収する保険料の算定方式は、加入者数で決まっていましたが、人生の成功者と非成功者で同じ負担で良いのかしら、ということになり、加入者数割から総報酬割にシフトしています。必然的に、お金持ちの健康保険組合の総報酬が高くなりますので、その負担は増え、逆に協会けんぽなどの負担は減った。苦しい組合には国が補助金を出していたので、必然的に国庫補助が削減されたという構図になったのが、今回の600億円の内情です。
以上、私自身、こうした方向性は正しいと思っていますが、今後さらに600億円をきりこむつもりなら、組合経営として更にリーズナブルなエコシステムが必要になってくるはずなので、民間のテクノロジーを使った健康長寿戦略をもっと積極的に進めるべきだと思っています。
R2予算のなかで予防健康のための自治体支援として700億円が計上されています。感度の高い自治体は合理的な執行を行っていただけると信じていますが、何かにつけ地方分権が叫ばれる昨今、分権の方向は正しくても、地方分権と合理化効率化、または地方分権と危機対応という全く異なる基軸が混同されて解釈される傾向がある現状にあって、感度の高くない自治体が合理的な予算執行を行って頂けるかは疑問です。そういう意味では、本当の地方分権とは何かを本格的に議論しなくてはならないと思っています。
具体的に言えば、健康長生きの啓蒙活動などは、それはそれで必要なことなのですが、それだけでは解決しません。課題を構造化して言語化しコンセプトを打ち出して具体的なアイディアを政策にしていかねばなりません。健康な人は健康になろうとするインセンティブは殆どありません。なぜならば健康だからです。病気になった人は急にインセンティブが高まる。そこを構造化してビジネスシーズを見出し、健康な人へのインセンティブをテクノロジーを使って付与する事業者がかなり多くなってきています。実際に健康保険組合の経営状況が黒字化したという事例も多く聞くようになりました。これだけとは言いませんが、こうした分野こそ、地方自治体は積極推進を図るべきなのだと思います。