ため池の管理保全について

司馬遼太郎の空海の風景という小説をご存知の方は多いと思いますが、まさにため池を中心とした讃岐の田園風景が見事に描かれています。空海は、水不足にあえぐ讃岐の地に多くのため池を残してくれました。もちろん、香川県だけではありません。全国に10万を超えるため池があり、その7割は江戸時代より以前に築造されたものか、築造年不明のものだそうです。そして構造不明のまま老朽化が進行しています。

ため池が一番多いのは兵庫県。広島、香川、岡山などと続きます。管理しているのは、個人であったり水利組合であったりとマチマチ。また、高齢化で管理の担い手が不足しており、管理が行き届いていない場合が多い。場合によっては、所有者や管理者が不明であるため池も多く見受けられます。ある種の公共施設であるにも関わらず、直接的に公共管理されているものは多くありません。

一方で、ここ10年を振り返ってみると地震や豪雨災害が多かったことが記憶に鮮明に残っていると思います。私が議員になって直後から、ため池管理保全に関する要望を多くいただいておりました。実際に、過去10年で被災したため池は1万か所、決壊したのは400か所。つまり、年間平均1000か所が被災し、40か所が決壊していることになります。驚きの数字ではありませんか。

そういう事情もあり、初当選直後に自民党の農業農村基盤整備議員連盟にため池小委員会を設置していただき、事務局長として活動をしてまいりました。恐らくため池に特化した議員連盟の会議体はこれが唯一なのだと思います。その後、先輩議員の力強い後押しでため池対策を拡充してきた自負はあります。ただ問題はまだまだ多い。それは人的災害が生じかねない防災の観点が主だったものです。

数年前に、まずは見える化しようということになり制度化した防災重点ため池。約1万超の防災対策が必要なため池を洗い出したものの、平成30年7月豪雨の際に32か所が決壊。なんとそのうち防災重点ため池指定はたった3か所でした。そして実際に一番心配していた人的被害がでてしまいました。正直甘かった。では済まされないくやしさを感じました。新聞紙面の一面に「ため池」という文字が何度も踊っていたのを鮮明に覚えています。

この7月豪雨災害を受けて政府は立法化に動き出します。ため池管理強化を目的に、ため池所有者に都道府県への登録を義務付けると共に、所有者に管理の努力義務を課し、さらに防災上重要なため池を指定して必要な防災工事の施行を命ずることができることを柱とした、農業用ため池管理保全法が閣法として制定され、令和元年6月に施行されました。

これと並行して、7月豪雨の反省として、防災重点ため池の新しい基準を策定し、再点検を実施したところ、法律成立後の令和元年6月になって64000件が防災重点ため池に再選定されることになります。従来の約1万強を大幅に上回るため池が対象となったわけです。さらにこの再点検で、ため池の管理状況が改めて明らかになりました。維持管理体制が極めて脆弱で権利関係が不明確であるなど、ため池の抱える問題が浮き彫りになりました。また、使われることもないのに整備するのは愚の骨頂です。昭和の政治でもあるまいし、それは全力で避けねばなりません。従って廃止も全力で取り組まなければなりません。

人的被害の発生を二度と見たくない。これだけ多くの対策が必要なため池を前に多少途方に暮れたときもありましたが、ざっくりと計算すると全く不可能ではないことが分かりました。そしてやらねばならぬことも明らかになりつつあります。それは大量の要詳細調査・要改修ため池の計画的かつ早急な実施のためには、既存のため池管理保全法では不可能だということ。つまり、平たく言えば同法はそもそも6万超を想定していたわけではなく、所有者に管理義務を課していたものの、それは努力義務であって、最も必要な人的支援・技術支援、そして財政的支援を明示的に示しておらず、集中的にため池をアップデートしていくには不十分だということです。同法では規制は定めているものの、必要な対策を迅速に実施するための制度、つまり国と地方公共団体の計画や役割分担の明確化や技術的支援体制、また財政措置等を安定的・明示的に担保するスキームが必要だということです。総合的な対策を計画的かつ強力に推進するためには新法が必要ということになります。

これらは、農業基盤整備の専門家でもある同僚議員と同志諸先輩の熱意で明らかになってきたものです。自分に専門知識がないことを恥じながら、それでも熱量だけは同じレベルで取り組んで行きます。またこの場で報告します。