アジア・ASEAN・アメリカ・・・日本

最近のアジアを中心とした国際地政学的な動きは、周辺諸国のみならず主要国に緊張を生んでいます。

日本で言えば、皆様ご存知の通り東シナ海・尖閣・ガス田あるいは沖の鳥島で中国と、竹島で韓国と、そして北方領土でロシアと問題を抱えています。ベトナム、フィリピン、マレーシア、台湾、中国は、南シナ海、南沙諸島で領有権争いをしています。

国際地政学的に問題が複雑化しそうなのは、後者のASEAN諸国を中心とした南沙問題です。

以前もこの場で指摘したことがありますが、ASEAN諸国と中国は経済的にも政治的にも切っても切れない関係にあり、だからこそASEAN諸国としては中国との距離感を慎重にはかっている(下記参照)。もう少し単刀直入に言えば、中国は大切だけど、余りのさばらしたくない。そこで、先にも指摘したように、ASEAN諸国にとって日本は中国とのバランスをとる上で非常に重要な国となっていました。

アジア通貨基金とアジア外交

 

その背景には日米同盟がアジアの安全保障上最も重要なコネクションであることがありました。強いものを仲間にしたいのはどの世界も同じで、日本はアジアのなかで、米国との安保関係があるというだけで、安保分野でアジアのハブとして機能していました。

日本の政権交代は、実はアジアを取り巻く安保の分野では激震に等しかったといえるのかもしれません。アメリカは、あからさまに米韓関係を重視しはじめ、ついで中国との首脳クラス会談は月1ペースで計画しています。日本の外交防衛担当閣僚会議が2年ぶりに開かれたのとは断然の違いがあります。

そして・・・。今までASEAN諸国は、日本単独はもちろんのこと、ASEAN+3(日中韓)やASEAN+6(日中韓印豪ニュージーランド)、あるいはASEAN地域フォーラム(ARF)などといった日本やアメリカが関与したアジア圏の地域連携の枠組みで中国とのバランスをとろうとしていましたが、これも日米関係の冷却にともなって、変化してきています。

というのも、ここ最近、ASEAN諸国が米国との軍事協同訓練を活発に行うようになっています。フィリピンは、現在1200人規模で海軍合同軍事演習を実施中です。ベトナムも7月に交流の予定がある。報道ベースでは、シンガポールも今年中に合同演習を行うとのこと。これらは基本的に冒頭申し上げた、中国に対する牽制のための措置ですが、日本のアジア圏での安保ハブ機能は、明らかに消失したと考えてもいいのかもしれません(最初からなかったとも言えますが)。

もちろん、日米合同軍事訓練も行っています。昨年末の演習は、日中間の緊張もあり、米韓訓練の6倍の規模、非常に大規模のものでした。米国自身も単独の演習の日本海・黄海などで行っています(中国から大きな文句の声がでた)。それだけ、アメリカとしては、アジアをグリップしておきたいのと同時に、アジアで紛争を起こされたくない、ということだと思います。

日米安保体制を強化しなければなりません。

そして、ASEAN諸国、アジア全体を安定化していかなければなりません。日米安保とは、日本とアメリカ、あるいは日本の安全だけの話ではないということを理解しなければなりません。

その上で申し上げれば、対米追従批判を展開される向きがあります。なぜアメリカにNoと言えないのだ、ということなのですが、Noとは言ってよくても日米安保は強化しておくべきは、上に述べたとおりです。

ただ、未来永劫このままでいいということではない。

基本は自分の国は自分で守るという体制をつくる努力をしなければなりません。神は自らを救う者を救う、です。しかし、愚直にやろうとすると経費や政治的に膨大なコストがかかります。ただ、考えようによっては、日本としては、うまくやる方法がある。あまり長くなりすぎるので今回はこの辺でやめておきますが、このあたりのことは、いつか書こうと思っています。

いずれにせよ、日本は、取り巻く安保環境を、既存の国際枠組みをたくみに駆使して、大海原を悠々と生きていかねばなりません。