(写真:連日連夜コロナ対策に全力を尽くす職員達)
事実上の第二波が到来しています。医療体制も地域によってはひっ迫しています。医療提供体制を確保することが最重要課題です。従って、そうした地域では、公衆衛生学的介入を直ちに行うべきで、判断基準となるデータセットとともに、どのような状況でどのような介入を行うべきなのか、整理して都道府県知事に提供するよう、提案しています。すなわち、地域ごとのスポット的な動的介入オペレーションの提言です。もっとも各地域で独自の介入を実施し始めたのはご承知のとおりです。
その際、何も県下全域に同程度の介入を行う必要はないということです。例えば地方から見ると東京は全域が危険水域に感じますが、実際の患者数のデータを見ると、特定の地域に集中しています。従って、スポット的に介入を時間軸のなかで動的に発出していくオペレーションが効果的なはずです。
どのような条件で介入を行うべきか。第一に介入の状況です。医療余裕が基本となります。患者数が今後どの程度増えていくかは基本的には実効再生産数によって予測することができます(現実問題としては、実効再生産数は1週間移動平均をとる場合が多く対処が遅れる可能性が高いので、参考にしながら入院患者数の予想をする方が現実的だと思います)。その予測が設計上の医療余裕を既定の日数で超える場合は、介入とすべきです。なお、医療余裕にも数種類の判断基準が必要なはずです。一言で患者と言っても、症状によって必要な医療機器が異なり、その機器もそれぞれ数に限界があるからです。軽症者から重症者まで、しかも重症者にもECMOと呼ばれる特殊な装置が必要な患者もいらっしゃいます。それぞれに対して、基準を設定し、どれかが超えても介入するということにしなければなりません。
次に、どのような介入を行うのか。介入タイミングはその内容にもよります。例えば、医療余裕が20%で、1週間後に医療余裕がー10%とオーバーフローする可能性が予測できたとして、緩やかな介入をした場合、1週間後の医療余裕が50%になるような介入もあれば、10%になるような介入もあるはずです。具体的には、緩やかな注意喚起として外出を控えるよう要請する場合と、強く行動制限を数値目標を8割などと示して要請する場合と、飲食店などに休業を要請する場合では、接触率の低減効果が全くことなるはずです。従って、様々な介入方法があるとして、それぞれの実効再生産数の低減率を予め推定しておき、それを根拠に、必要な介入を行うことが効果的だということになります。
すなわち、介入すべき状況、介入する内容、介入するタイミングの3つの軸で、地方自治体が県民に説明できる形で判断できるツールセットが必要ということになります。
このような動的かつ適切なタイミングで介入を行うことで、医療負荷を減らせ、かつ、経済的インパクトも最小化できると思います。
最後に考え方ですが、まず感染しないに越したことはありませんが、医療提供体制が確保できていれば、感染したとしても重症化し死に至る可能性は高くありません。この可能性というのは、他疾患や事故の標準的な可能性と比較しての話です。先にも書きましたが、医療現場の献身的努力によって、第1波のときとは比較にならないくらいの合理的対処が可能な状況になっています。感染を恐れすぎて生活困窮者が増え、社会不安が蔓延するような事態は絶対に避けるべきですが、医療崩壊を起こせば同様に社会不安が蔓延します。GoToキャンペーンについて考え方を聞かれる場合がありますが、以上の考え方に尽きるものです。