謹賀新年ーイソップ物語に学ぶ丑年の教訓

丑年の新しい年を迎えました。謹んで新春のお慶びを申し上げます。皆様方には、公私にわたり一方ならぬご厚情を賜り、心から感謝申し上げる次第です。

さて、昨年は、中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症に翻弄された一年でした。瞬く間に全世界に広がり、社会経済活動の縮減から、消費・生産・労働というあらゆる側面で経済的に深刻な打撃となり、世界を苦難の底に突き落としました。今年こそは有効なワクチン配布による終息を願いますが、現時点では未だに感染に対する漠然とした不安が蔓延しています。

コロナ禍で抱えた不安という要素は、社会に深刻な傷跡を残しました。一時は、ウソやデマも拡散されました。自粛警察という、社会正義を掲げて世をただす運動も盛んになりました。マスク警察や休業警察などです。しかしこれらは独善的正義であったように思います。主観的正義や独善的正義ではなく、社会の知恵として対処するためには、全員が正しい情報を持たなければならないはずです。

丑年で思い出すのが、イソップ物語の「3頭のウシとライオン」です。仲良く草を食べている3頭のウシを1頭のライオンが狙う寓話ですが、3頭同時に狙うのは困難と見たライオンが、ウソやデマを流してウシを分断させることに成功し、順番に餌食にした話です。ライオンの餌食になったのは、ライオンが狡猾であったからに他なりませんが、ウソやデマを簡単に信じてしまったこと、仲間を信じなかったこと、も教訓として現代に伝えているのだと思います。

社会不安というものは、社会分断を増長し、批判と混乱を招くものです。国内だけではありません。各国で格差から生じたポピュリズムにより自国主義傾向が強まっていた中で、コロナ禍の移動制限やサプライチェーンの自国回帰がそれを加速したように見えます。

そうした時代だからこそ、仁を大切にし、協調を尊び、それでも敢えて一人で進まざるを得ない時には、あらん限りの力を尽くして状況を分析し、果敢に挑戦する、という態度が大切なのだと思います。コロナ禍で目指す社会像から離れていく様相を目の当たりにし、改めてイソップ物語の「ウシ」の教訓をかみしめて、理想を着実に実現していく努力を続けたいと思います。

最後になりましたが、皆様方には今後とも引き続きご指導ご鞭撻を賜りますよう心からお願い申し上げます。