風評被害

  
一昨年のことだったか、知人から、企業倫理について話をせよ、と依頼され、寺田寅彦の科学する心を主軸に、日本人の倫理観について話をしたことがありました。準備のため、寺田作品を読み漁っていると、小生の親父が生まれた直後の昭和10年11月(親父は10月生まれ)に発表された、「小爆発二件」、というエッセーに目が留まったのを記憶しています。

このエッセーは、寺田寅彦が軽井沢に保養で宿泊している際の、浅間山の噴火爆発の経験を題材にしたものですが、舞い上がる噴煙に対する科学的考察とともに、寺田が感じていた当時の文学の粗雑さを心から案じる記述が妙にシンクロと申しますか、マッチして、心に残っていました。

「天災は忘れたころにやってくる」とは、寺田寅彦のものだとされる警句です。が、寺田はこのエッセーで、「物事を怖がりすぎたり怖がらなさ過ぎたりするのは簡単だけど、正当に怖がるのは難しい」という趣旨のことをおっしゃっています。

風評被害が相当でているようです。恐怖をコントロールするのは難しく、ビジネスが絡むとさらに難しい。その為にはなおさら政治が情報を正確に伝えなければなりません。