尖閣:日本は外交メッセージ力強化を

1.何はともあれ国際世論に尖閣問題を訴えたのは賞賛に値する

私の息子は自衛艦隊司令官も勤められた某海将が名付け親と言っても過言ではありませんが、その方が退官後にアメリカに滞在しておられた3年ほど前、別件でお電話した際に、「日本では普天間問題で大騒ぎになっているが、親日派もしくは日本関係者が国防総省にも国務省にもシンクタンクにもいなくなりつつあるのが実は一番心配だ」との趣旨のことをおっしゃっていたことを思い出しました。実際にシンクタンクでも中国研究が盛んで日米関係を専門とする研究員が少なくなっていることを聞いてます。

先の北朝鮮ミサイル問題では、実はアメリカが一番面目を失ったのではないかと思っています。まだ失敗したからいいものの、あれで成功していたらとてつもない勢いでオバマ外交は弱腰外交と非難されるのは目に見えています。何れにせよアメリカは対北朝鮮強硬に動かざるを得ない。北朝鮮側はほとんどの対米外交カードを失ってしまいました。ロシア・中国も、もう知らんという感じになっている。そういう背景ですから、日本は韓国に次いで最も国際世論の中で当事者国としてその言動が関心を集めてもよかったはずでしたが、先に書いたように内政ボロボロ状態で、国際的メッセージを発出する元気もない状態です。北朝鮮事案で日本の存在感はほぼゼロです。とほほとはこのことです。しかし、これからどうするのか、次の一手を絶対に考えておかなければなりません。これについてはいつか書いてみたいと思います。

そして過日、強烈なインパクトのあるメッセージが発せられました。石原都知事による尖閣列島一部買取発言です。しかも周到にアメリカで発言をするという如何にもザ・政治家らしいやり方です。気持ち良い。アメリカで発信するというのは民主党ではおおよそ考えがたい発想です。こういうやりかたでも、しっかりと国際世論に訴えることが先ずは非常に大切です。

2.都知事が買わなくても日本固有の領土

実質的な話をします。都知事は随分前から購入意欲を示していました。売ってくれるところまで交渉したのはあっぱれだと思います。しかし、買っても買えなくても尖閣は日本の領土です。そして、既に日本政府が所有者からの借り上げの形で支配しています。だから国内的に土地所有権が移転したからといって実際に守るという意味では大した問題ではない。もちろん民間所有者が外国に売ってしまう可能性は否定できませんから、所有を担保しようとする意味では大きな前進であるとは思っています。ちなみに、国会でも昨年、超党派議連で、国有化と自衛隊基地建設などを議論しています。全く海外へのメッセージ性はなかったですが・・・。

3.ではどうやって実際に守るのか

中国は資源・エネルギ的な要素に加え、安全保障上の観点で外国籍船の動きを封じるために尖閣の所有を主張しています。そういう意味では、南西諸島全域の安全保障として問題を捉える必要があります。ですから、やるべきは、南西諸島全域の主要地に海上自衛隊の寄港地を整備し、先の震災対応で問題となった揚陸能力を改善し、そして定期的に大規模訓練を同地で実施することがまず先決だと思います。官房長官は「あくまで訓練です」をずっと連発するだけでいい。

寄港地。尖閣に自衛隊の基地を作れという議論もありますが、これはチキンレースをするだけです。南西諸島で周辺国が絶対に問題にできないポイントにつくってやればいい。

揚陸能力。6年ほど前、ノーラ・タイソンさんという方にやり手の女性の米海軍大佐だとの紹介でお会いしたことがあります。後に女性初の空母指揮官・艦長・将官(ジョージ・W・ブッシュ)に就任し大々的にマスコミに取り上げられていましたが、当時は、バターンという嫌な名前の強襲揚陸艦艦長でしたので記憶が強烈にあるのですが、その揚陸艦、強襲とあるからきな臭いのですが、実は内部は病院船にもなる構造になっていました。日本にこれが数隻あれば災害のときに随分違っていたと思っています。こうした揚陸艦をもっているかもっていないかでも、国際メッセージになります。

定期演習。尖閣を睨みかなりの演習が頻繁に行われていますが、これは隊員たちの訓練の色合いが強い。しかし規模的に政治メッセージになりません。場合によっては空母も「お招き」しての大規模演習が必要だと思います。あくまで演習です。