連日のように派閥のパーティを巡る裏金とキックバック問題が報道されており、政治の一端を担う者として極めて恥ずかしい限りです。ただ恥ずかしいでは済まされないので、年末の投稿にそぐわない内容かもしれませんが、政治とカネについて触れておきたいと思います。
●政治にカネはかかるのか?
かかる人はかかる、かからない人はかからない。
政治にカネがかかるとすれば事務所運営です。小さく運営しようと思えばカネはかからず、大きく運営しようとすればカネはかかります。様々な運営をする様々な政治家が集まって政治をするべきです。全員が、地域でベタベタの活動をすれば、基本的・長期的・国際的な政治にはなりにくい。一方で全員が、全国比例区で知名度のある方のような活動をすれば、生活に直結する地に足が付いた政治にはなりにくい。カネがかからない政治にはすべきですが、問題はカネがかかるからではなく、カネが流れの透明性とガバナンスにあります。
●裏金は収入公開で規制できるのか
できません。
話題の派閥パーティで裏金が作れたのは基本的には現金授受が可能だからです。収入の記載義務が20万円超というのが抜け道になっていると主張する人がいますが、全く間違っています。1円からだろうが裏金を作った後に公開しても何の意味もありません。
●裏金はどのように規制すべきなのか
現金授受の禁止と入金記録一元化による監査実効性の担保です。
現金授受はどのような場合においても記録が残らないため不正の温床になります。また、現在は現金収入を結果的に事務所が法定監査人に報告していますが、法定監査人の務めは基本的に支出の監査にありますから、収入の監査も行って頂くよう改正が必要です。更に、法定監査人の収入に関する監査項目も同時に検討すべきです。いずれにせよ、監査人による監査実効性を担保することが重要です。
●それでも公開はすべきではないか
公開する方向性が重要です。
善意の資金協力自体を制限する方向になれば、お金持ちしか政治家になれません。NGOの透明性を評価する団体がありますが、基本的には、どのような人からどのくらい協力があり、それを何にどのように使い、透明性の努力をどのように行っていて、その努力をどのように続けているのか、が評価ポイントになっています。資金協力を全部公開したところで、個々の協力に対する評価がなされるわけではなく、膨大なコストをかけて公開しても政治の透明性には繋がりません。実体的には監査人の監査実効性の制度的担保をもって為し、政治の透明性にはこうした公開の努力を政治家に課すことが必要です。
●党の政治資金の透明性について
今回の問題は派閥の政治資金の運用を巡る問題ですが、政党における運用を巡っては度々メディアで厳しい指摘がなされてきました。私自身は党でどのような運用が行われているのかを完全に理解しているわけではないので軽々に言うべきではないのかもしれませんが、今後、疑念を持たれないようにするためには、やはり法的監査制度を整備した方がよいと考えています。その為には政党法なるものも必要であろうかと思います。
以下、余談ながら、そもそも情報公開について日頃思っていることを書き留めておきたいと思います。政治とカネと言うより、情報公開の意味合いについての一般論です。
●情報公開と民主主義コスト
民主主義を支えるために必要な情報を適切に公開するためには、そのためのコスト管理が必要です。いわゆる民主主義のコスト論です。一般論ですが、情報公開は民主主義にとって極めて重要な要素ですから、公開が原則になります。そして全部公開した方がいいに決まっている。ただし、その為にはコストがかかるという理解が余り浸透していないように思います。
例えば情報公開制度によって、行政は毎日のように情報公開請求を受け、資料を作成し、精査し、公開していますが、その中で、果たして本当に意味があるのか考えてしまう請求もあります。各行政には情報公開担当の部局があり、彼らが請求内容に従って実際の公開作業を担当部局に割り振るのですが、当たった部局の担当者は1週間、それに専念せざるを得なくなります。これは、国会議員が行う質問主意書も同じです。乱発されると通常業務が1週間止まらざるを得ない。
米国の国務省ではかつて情報公開制度に従って公開した資料に、かかったコストを但し書きで添えることをしていました。例えば、「なお、この資料の作成には、〇〇ドルかかりました。」などです。こうすることで、作業も増えますが、請求者側にもコスト意識が醸成されると考えたのだろうと思います。
真面目にやっている公開者側にすれば、公開が国家の透明性、政治の透明性、民主主義の根幹に明確に役に立っていると実感できることが必要で、逆に言えば、公開請求側にとっては、どのくらいのコストがかかっているのかを理解してそれでも公開すべきだと実感して頂くことが、公開制度全体の実効性に極めて重要なポイントになるのだと思っています。